はっきり言って今の仮想通貨はバブルです
始まった当初は10円にも満たなかったビットコインは、2016年に10万円を突破したかと思えば2017年には100万円を超え、ついには200万円をも超えました。 長期的には10円から200万円に大幅値上がりしていますので、初期の初期に買った人は資産価値が10万倍なんておそろしいことになっています。 一攫千金を夢見て仮想通貨取引に参入する人が相次いでいますが、はっきり言って今の仮想通貨はバブルです。
こういう時期には「バブルだ!」派と「バブルじゃない!」派が出てくるものですが、 なぜ今仮想通貨取引に参入するのが危険で、バブルと言えるのかを解説していきます。
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仮想通貨の魅力
最初に「今は仮想通貨バブルだ」と言いましたが、仮想通貨自体は非常に将来性のある通貨だと思っています。
まず「管理者がいない」という点です。日本円は日本銀行(紙幣)と日本政府(貨幣)が発行していますが、 その量や価値は政策に左右されます。選挙の結果や日銀総裁の交代で円高になったり円安になったりしますが、 これは日本円の管理者が交代するからです。
仮想通貨には管理者がいません。全利用者が相互に管理している形になりますので、国の政策や選挙に影響を受けません。
そのため世界共通の通貨として、どの国でも為替手数料を支払うことなく、また送金手数料を支払うことなく、 仮想通貨をやり取りできます。「銀行という手数料ビジネスを介さない」というのも大きな魅力です。
そして最も重要な魅力は、「トークン」を発行することにより独自の仮想通貨を誰でもつくれるという魅力です。
今は「Tポイント」や「ポンタ」など、大規模な会社でないとポイントサービスができません。 しかし、仮想通貨の「トークン」機能をつかえば、誰でもポイントサービスができ、 独自の経済圏をつくれるという大きな魅力があるのです。
例えば私が「MY就活コイン」という名前のトークンをつくり、記事を読んでくれた読者に「1MY就活コイン」を配ったとします。 「5MY就活コイン」貯めると私の恥ずかしい写真を見れるサービスがあれば、みんなこぞってコインを貯めるでしょう(?) それどころか、他の就活生からコインを買ってまで写真を求めるかもしれません(!?)
写真に限らず、「10MY就活コインで中学生の時に書いた小説読み放題」「20MY就活コインで住所公開!」などサービスを拡大していくと、 みんなはコインを貯め、コインを売買し、「MY就活コイン」を中心とした「経済圏」が出来上がります。
他にも例えばアイドルグループが「アイドルコイン」を発行し、会員権代わりに1枚5000円で販売したとします。 そのアイドルを応援したいファンはアイドルコインを何枚も買い、その代金はアイドルの活動原資に使われます。 そしてアイドルコインを持っている人限定で握手会やサイン会を行い、「アイドルコイン」を持っているメリットを高めていきます。
アイドルグループの人気が出るとアイドルコインをほしがる人が増え、初期にアイドルコインを買っていたファンから、1枚1万円などの高値で取引され、 売った人は大儲け、買った人は握手会やサイン会に参加できるという、win-winの関係が生まれます。 このように、「アイドルグループ独自の経済圏」をつくることができるのです。
アイドルグループにとってはファンがアイドルコインを買ってくれるとお金が集まります。 活動資金が足りない地下アイドルでも、アイドルコインを売ることで資金調達がやりやすくなり、 その資金でライブやCDの販売などをして人気グループに成長していけるのです。
このように、「誰でも独自の通貨を発行できる」のは仮想通貨の大きな魅力です。
仮想通貨はこのように非常に将来性があるため、最近は注目を集めてどんどん買われています。 ビジネスニュースを読んでいると毎日仮想通貨の話題が出て、 名だたる起業家が出てきて「仮想通貨はすごい」とコメントするのです。
これにつられて素人の一般人すら仮想通貨を買い求めるようになりました。
仮想通貨は成長途上
すでに仮想通貨のトークン機能を使って資金調達(ICOと言います)をしている企業はたくさんあります。 未上場の会社は株式を発行しようにも買い手を探しにくく、また買った人も売りにくいという問題がありました。 しかし、トークンならオンラインでどこの国の人とでも、いつでも取引できます。
そのため、投資家に仮想通貨を出してもらい、株式の代わりにトークンを発行します。 将来的にはトークンには、株式のように配当金や優待をつける予定です。 事業が成功すればトークンの価値があがり、投資家はほかの投資家にトークンを高く売ることができます。
つまり、「トークン」は「株式」のような働きもするというわけです。
ところが、このような使われ方をしているのはまだごく一部に過ぎず、 仮想通貨を使った支払いや、独自の経済圏はまだまだ成長途上です。 スーパーやデパートではまだ仮想通貨は使えず、通販でも仮想通貨を使えるサイトは稀です。
今仮想通貨を買っても使い道が特にないというのが大きなポイントです。
バブルとは?
さて、いったん話を「バブル」に戻しましょう。
1980年代のバブルは、プラザ合意による円高不況を想定して公定歩合を大幅に引き下げた(金利を大幅に下げた)ところから始まります。 実際には円高により原料が値下がりし、企業は海外に工場を移転するという対策もとったので、 それほど大きな打撃にはなりませんでした。
「不景気になるから」と市場に大量のお金を流したのに、当の企業は特にお金に困ることがなかったのです。 すると、本来企業に貸し出されるはずだったお金が余り、それが不動産投資に使われてしまいました。
バブルの何が問題だったのかというと、不動産が「本来あるべき値段」よりはるか高く値上がりしてしまったことです。 不動産の「本来あるべき値段」は、「家やビルを建てたい人が買える値段」です。 サラリーマンはだいたい4000万円くらいまでならローンを組んで家を買えますが、8000万円、1億円となると手が出ません。
それでも投資家は銀行が貸してくれるので借金をして不動産を買い、別の投資家はもっと高く借金をしてそれを買うというのを繰り返し、 家やビルを建てたい人を置き去りにして不動産価格が暴騰してしまったのです。
あまりにも不動産価格が高騰してしまい、家やビルを建てたい人が土地を買えなくなってしまったため、 日銀は公定歩合を大幅に引き上げることにしました。
そのころには不動産を取引していたのは投資家だけです。投資家が投資家に売っていただけなのです。 投資家が「金利が上がったのでやーめた!」と買わなくなれば、あとは「家やビルを建てたい人」が買える値段まで、 急激に不動産価格が落ちるだけです。
こうして「ほんとうにほしい人」を置き去りにした価格の高騰は、バブル崩壊という結末を迎えました。
仮想通貨を「ほんとうにほしい人」はいるか?
仮想通貨がバブルかどうかの話に移ります。
確かに仮想通貨は魅力的で、将来性の高いものです。使われ方によっては日本円やドルが不要になってしまうくらい、 可能性を秘めた新しい通貨です。円やドルが金本位制から管理通貨制度にうつったように、 「管理通貨」から「仮想通貨」にうつっていくことは不思議ではありません。
とはいえ、上でも説明したように、現時点では使い道がないという問題がありました。 ICOという企業への投資に使うことはできます。しかし、仮想通貨を買っている人の大半は、 仮想通貨をただ持っているだけなのが現状です。
これは、「日本円をただ持っているだけ」とはわけが違います。
日本円は使い道がたくさんあります。スーパーでも、百貨店でも、インターネットでも使い道があります。 日々の生活費にも使えて、株式投資もでき、不動産投資もできます。
生活のため、投資のためと、「日本円をほんとうにほしい人」は日本全国に1億2000万人います。
一方で仮想通貨はどうでしょうか。
今のところ大きな使い道はICOだけです。株式を発行できない未上場のスタートアップ企業に投資する以外の使い道がほぼありません。 すると、「仮想通貨をほんとうにほしい人」はこういった企業に出資したい「一部の投資家だけ」という状況です。
現に、仮想通貨で支払いができるビックカメラも日本円の取り扱いを廃止したわけではありません。 仮想通貨がなくても、日本円を支払えば商品を買うことができます。 ほとんどの人にとって仮想通貨はなくても全く困らないのです。
「ほんとうにほしい人」を置き去りにした価格の高騰どころか、「ほんとうにほしい人」がほとんどいないのに価格が高騰しているのです。 もうこの時点でバブルより危険な香りがしますよね。
さらに悪いことに、ICOという唯一と言ってもいい使い方ですが、こちらにも実は仮想通貨が高騰する意味がありません。
なぜなら、スタートアップ企業は未上場で株式を発行しても買い手を探すのが大変だから、仮想通貨を使うだけです。 仮想通貨を集めても、仮想通貨で工場を建てたりオフィスを借りたりできるわけではありませんので、 結局集めた仮想通貨は日本円に換金します。
こうなると、お金を1億円集めたいスタートアップ企業は、仮想通貨を1億円分集めればいいだけです。 「1億仮想通貨」ではなく「1億円分の仮想通貨」です。
もうお気づきでしょうか。
「1億円集めたい人」にとって、1仮想通貨が何円でも関係ないのです。 1仮想通貨が100万円なら100仮想通貨、1仮想通貨が10万円なら1000仮想通貨を集めるだけです。
スタートアップに出資する投資家も同じで、100万円出資したければ「100万円分の仮想通貨」を買うだけでいいのです。 1仮想通貨が100万円なら1仮想通貨、1仮想通貨が10万円なら10仮想通貨を買って、 スタートアップに出資するだけの話です。
なんと、1仮想通貨が200万円であることは、誰にとってもどうでもいいことなのです。
いえ、「誰にとっても」というのは言い過ぎでした。「仮想通貨の価値が上がれ」と祈っている人たちがいます。 それは、「仮想通貨で一発大儲けしたろ!」と意気込んでいる投機家です。
1980年代の不動産バブルとまったく同じどころか、それよりたちが悪いですよね。
不動産には少なくとも「ほんとうにほしい人」がいます。夢のマイホームを建てたい人、 自社ビルを建てたい人、マンションを建てたい人などです。 どんなに値下がりしても、「ほんとうにほしい人」が買える価格で落ち着きます。
しかし、仮想通貨には不動産のような「ほんとうにほしい人」が存在しません。
ましてや200万円を達成したかと思えば次の瞬間には50万円も値下がりしているような通貨が決済手段として使えるわけがなく、 ビックカメラで買い物をする人は日本円で買ったほうがよっぽど安心です。
「ほんとうにほしい人」がいない高騰は間違いなくバブルです。 投機家が「値上がりする!」と思い込んでいる投機家に売っているだけで、 「仮想通貨の本来あるべき価格」は200万円どころか、1円すらないかもしれません。
仮想通貨は「使い道なくね?」と投機家が気づいたころ、不動産バブル以上の激しい大暴落をすることでしょう。
仮想通貨の大暴落を防ぐ唯一の可能性
しかしまだ、仮想通貨の大暴落が防げる可能性はあります。かすかに。
それは、仮想通貨の使い道が増えまくることです。いえ、それだけでは足りません。 「仮想通貨でないとできないこと」が増えまくらなければなりません。 「別に日本円でできるし~」では、わざわざ仮想通貨を買う理由がありませんからね。
例えばコンビニやスーパーが仮想通貨でしか支払いを受け付けない、 ライブのチケットが仮想通貨でしか買えない、税金が仮想通貨でしか払えない、 アマゾンが仮想通貨しか受け付けないという世界になれば、仮想通貨は暴落しないでしょう。
なぜなら、そうなれば「仮想通貨をほんとうにほしい人」がたくさん出てくるからです。
残念ながら、私はそれはあり得ないと思います。特に日本では。
ソニーがFelicaを開発し、「Edy」という電子マネーを作りましたが失敗し、楽天に売却してしまいました。 SuicaやiDというスマホでタッチするだけで支払いが済む手段ができましたが、 なぜか日本人は財布をバリバリ開いてお札を出し、小銭をジャラジャラ探すのが好きです。
電車にはSuicaで乗るくせに、エキナカのNewDaysでは現金で支払いをするほどの現金好きです。
さて、電子マネーすら使わない日本人が、仮想通貨を使いこなせるでしょうか。
私はその可能性は限りなくゼロだと思います。 政府が日本円を廃止してしまわない限り、日本人は日本円を使い続けます。
「でも仮想通貨を買っているのは世界中の人たちでしょ?」
さらに残念なことに、仮想通貨を買っているのはその60%が日本人です。 さらに残りの40%の外国人だって、「仮想通貨で一発大儲けしたろ!」と思っている投機家です。 「仮想通貨をほんとうにほしい人」はほとんどいないのが現実です。
もし外国で仮想通貨しか使えない国が出てきたとしても、仮想通貨を買っている60%を占める日本人には関係ありません。 投機家が「やーめた!」と言えば、一気に60%の利用者が消えることになります。 急に60%もの投機家がいなくなれば、とんでもない大暴落が容易に予想できますね。
仮想通貨の今後
最初にも述べたように、仮想通貨に「管理者がいない」「誰でも独自の経済圏を形成できる」という大きな魅力があるのは確かです。 いずれ日本円やドルに代わって仮想通貨が主流になる時代も来るでしょう。 しかしそれは遠い未来です。
少なくとも仮想通貨が200万円である必然性はどこにもなく、一度は価値がつかなくなるほど大暴落するでしょう。 そして、その低い値段で安定するようになれば、ICOだけでなく、スーパーやコンビニでの支払い、 税金の支払い、給料の受け取りに使えるようになり、徐々に普及していくでしょう。
そして「独自の経済圏」をつくる人が増え、仮想通貨を持っていないとサービスを受けられない社会が実現して初めて、 「仮想通貨をほんとうにほしい人」が現れ、また仮想通貨の値段があがっていくでしょう。
確かに仮想通貨の将来性は高いですが、現時点では何の価値もありません。
もし「仮想通貨で一発大儲けしたろ!」と思っている人は、ある日突然投機家が仮想通貨から撤退してしまい、 仮想通貨の価値が限りなくゼロに近くなるリスクをしっかり踏まえた上で購入しましょう。 決して1980年代のバブルを繰り返してはいけません。
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著者:村田 泰基(むらた やすき)
合同会社レセンザ代表社員。1989年生まれ。大阪大学法学部卒。2013卒として就活をし、某上場企業(メーカー事務系総合職)に入社。
その後ビジネスの面白さに目覚め、2019年に法人設立。会社経営者としての経験や建設業経理士2級の知識、自身の失敗経験、300冊以上のビジネス書・日経ビジネスを元に、8年間に渡り学生の就職活動を支援している。
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