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機械化・IT化で豊かになるか?|輝く未来はない!

 機械化IT化がもてはやされますが、果たして本当に機械化・IT化で豊かになるのでしょうか。 機械化はイギリスの「産業革命」に始まり、現代は「IT革命」と言われています。

 特に就活をしているとメーカー企業で「機械化・IT化・効率化」と声高らかに唱えられています。 要は「機械化・IT化をすすめて経営を効率化しているので我が社は優秀です!」 と言っているわけですが、本当にそうなのでしょうか。



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産業革命後のイギリスはどうなったか

 産業革命に成功したイギリスは未曽有の大繁栄を迎え、戦争には連戦連勝、 スペインやポルトガルから植民地を奪い海外領土を急速に拡大し、 「パックスブリタニカ」と言われるほど「イギリス一強」の時代を迎え、まさに機械化したイギリス大勝利な時代でした。

 「やっぱり機械化は豊かになる!」・・・と思うのは早計です。 パックスブリタニカもそう長くは続きませんでした。

 ドイツやフランスなどの他のヨーロッパ諸国も機械化して力をつけてきて、 さらにはかつての植民地であるアメリカも強大化してきました。 第一次世界大戦後は疲弊したイギリスに代わり、アメリカが世界の王者として君臨しました。

 さて、世界で最初に機械化したイギリスは「普通の先進国」です。 世界の王者がどうして没落してしまったのか。 答えは簡単です。

 他の国々も機械化したからです。

 イギリスはいち早く機械化したことで、「激安の綿織物」が作れるようになったのです。 ドイツやフランスはまだ手作業でしたから、イギリスの激安綿織物に負けてしまいます。

 イギリスもわざわざ原価のまま綿織物を売る必要はありません。 ドイツやフランスよりも安い価格であれば、いくら利益をとっても売れます。

 「本当はもっと安くできるけど、他の国よりちょっと安いくらいの値段で売る」 ことで暴利をむさぼり、世界中の富を独占したのです。

 しかし、ドイツやフランスもいつまでも負けっぱなしではありません。 自分たちも機械化をすすめるのです。

 こうして激安綿織物をつくれるのはイギリスだけでなく、ドイツやフランスもつくれるようになりました。 こうなるとイギリスはもはや一強ではありません。イギリス・ドイツ・フランスで激安競争を繰り広げることになるのです。 イギリスは独占していた事業が他国との競争にさらされるようになり、没落していったのです。

 産業革命の事例から、「機械化した直後はぼろ儲けで豊かになったが、 他の国も機械化し始めると優位性は失われ、没落していく」と言えますね。

 

IT化で豊かになったか?

 確かにIT化で仕事は楽になり、無駄な作業をせずに済み、趣味は多様化し、 家電も進歩してきました。しかし、それは仕事があればの話です。

 昔は図面も手書きで、資料もすべて紙、計算は電卓とは言ってもすべて手作業でした。 資料を探す係がいたほど人手がたくさん必要でした。(バブル入社の上司談)

 社員をたくさん雇わなければならない分、固定費はかかりますが、 それは他の企業も同じです。固定費の分を価格に乗せて売れば、 ちゃんと利益も出ていました。

 しかしIT化を進めることで、工場も経理も設計も営業も人を減らすことができました。 仕事がパソコンに取って代わられるのですから、労働者にとっては仕事がなくなる=職業がなくなることですので、 由々しき事態です。しかしそれはひとまず置いておきましょう。

 企業にとってはどうでしょうか。固定費を削減することでその分、利益が出ます!・・・というのは産業革命後のイギリスと同じです。 確かに一番最初にパソコンを導入した企業はその瞬間から固定費を減らすことができ、 パソコンを取り入れていない企業に比べて激安で製品をつくることができます

 「本当はもっと安くできるけど、他の企業より少し安いくらいの価格で売る」ことで暴利をむさぼり、 その業界の富を独占することができたのです。

 しかしIT化による富の独占はやはり、他の企業がIT化を進めることで崩壊します。

 他の会社もIT化すれば自社の優位性は失われ、安売り競争に巻き込まれることになります。 利益だった部分は競争のため、その分安売りしなければなりません。 せっかくIT化したのに利益は元通りで、特にもうかっている企業ではなくなってしまいました

 

機械化・IT化は豊かにならない

 機械化でもIT化でも、最終的には豊かにならないことがわかりました。 自分たちだけが機械化・IT化したときは圧倒的優位に立ちます。 しかし、他の国、他の企業が機械化・IT化すれば優位性は失われ、元通りになります。

 初めは技術革新によって大儲けでき、貧富の差が拡大しますが、他の企業も死にもの狂いで追いかけますので、 いずれ追いつかれて貧富の差は元通り収縮していくのです。

 

物価安のツケは消費者に回ってくる

 機械化・IT化で忘れてはならないのが「仕事が減る」ことです。 機械化・IT化の目的は「固定費の削減」であり、要は「社員を減らす」ことです。 あらゆる職場から人が減ることで、失業率が増加します。

 失業した人の労働力は「派遣」「アルバイト」「パート」などで安値で買いたたかれ、 収入が減ります

 企業に残った人も、機械化・IT化した直後はボーナスも増えて収入が増えたことでしょうが、 他の企業も追随して機械化・IT化が進められると自社の優位性がなくなり、 結局のところ収入は元通りです。

 さて、誰が得をしたのでしょうか

 よくある勘違いが、「機械化・IT化でモノの値段が安くなったから消費者が得をした!」という考えです。 100円のパンが50円に値下がりしたら嬉しいですよね。しかし、パン屋さんの立場になってみれば話は別です。 単純計算で収入は半分になります

 するとパン屋さんは収入が減ったので節約しなければなりません。 パン屋さんは車も買わず、旅行もせず、ゲームも買わず、外食も減らします。 すると今度は車屋さんの収入が減り、旅行会社や観光地の収入が減り、ゲーム会社の収入が減り、 レストランや居酒屋の収入が減り・・・と悪循環が始まります。

 最終的にはパンが安くなって喜んでいた消費者も収入が減って、 誰も得をしていない状況になります。

 企業の収入が減るということは、法人税や所得税が取れなくなって税収も減るということです。 これがデフレの恐ろしさです。皆が一斉に貧乏になっていくのです。

 

儲かるのも一瞬だけ

 機械化・IT化は一時的には豊かになります。それも、自分たちだけが機械化・IT化した直後だけという期間限定です。 だからこそ企業は常に技術革新を目指して日々、研究しているわけですが、 それがさらなる「効率化」につながり、職場から人がいなくなり、さらなる安売り競争になっていくことは考えていません。

 なぜなら、そうしなければ他の企業が先に技術革新し、自社が負けてしまうからです。

 就活ではメーカー企業が「機械化」「IT化」をいかにも素晴らしいことのように述べ、 「うちは進んだ企業です!」などと自慢しているのはおかしな話です。 今生き残っている企業ならどこでも当たり前のことな上に、最終的には自分が損することだからです。

 

「先進国」も時間の問題?

 今はまだ先進国・発展途上国という分類ができ、先進国は機械化・IT化が進んでいる国、 発展途上国はまだ機械化・IT化が進んでいない国と分けられます。 機械化・IT化が進んでいない国があるから、先進国は先進国でいられるのです。

 いずれいろんな国が先進国の仲間入りを果たします。 すると今まで手作業・人海戦術で物を作っていたために安売りできず、海外製品に負けていた国々も、 自国で安い製品を量産できるようになります。

 こうなると、今、先進国である国々も優位性は失われて、先進国と発展途上国の違いがなくなります

 今でこそ先進国である日本は世界で大きな顔ができます。しかし、いずれはあらゆる国々が機械化・IT化して、 特に先進国でもなんでもなくなっているでしょう。

 これは他の国々も同じです。第二次世界大戦後に超大国となったアメリカ、ソ連はいまや先進国のうちの一国に過ぎず、 ソ連は崩壊し、アメリカの覇権も中国に脅かされています。しかしまだまだ中国以外にも、 ブラジルやインドといった先進国候補がいます。

 アジア諸国や中東・アフリカもいつまでも搾取される側というわけではないでしょう。 いずれあらゆる国が「先進国」になっていきます。そのときもはや「先進国」などなくなっているでしょう。

 

機械化・IT化の先はどうなるのか

 機械化IT化すると、結局企業は得をするわけではなく、 労働者にとっては仕事がなくなっていきます。しかしこれを続けないと企業は競争に負けますし、 どうしても機械化・IT化しなければなりません。

 こうしてどんどん社員がいらなくなっていきます。

 先ほど述べたように、皆が貧乏になる可能性も高いですが、 そのまま貧乏に甘んじる人ばかりではありません。 仕事がなくなったらどうすればいいでしょうか。そうです。自分で仕事をつくればいいのです。

 企業に人がいらなくなると、余った労働者は自分で起業するようになるでしょう。 大企業は社員が減って規模が縮小し、その代わりに小さい企業がたくさんできるようになると考えられます。

 それでも機械化・IT化のおかげで国際的な競争力は失わず、しかしあらゆる国々で機械化・IT化が進んでいますので、 それほど大儲けするわけでもなく、世界中が「総中流」になる時代が来るでしょう。

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著者:村田 泰基(むらた やすき)
 合同会社レセンザ代表社員。1989年生まれ。大阪大学法学部卒。2013卒として就活をし、某上場企業(メーカー事務系総合職)に入社。 その後ビジネスの面白さに目覚め、2019年に法人設立。会社経営者としての経験や建設業経理士2級の知識、自身の失敗経験、300冊以上のビジネス書・日経ビジネスを元に、11年間に渡り学生の就職活動を支援している。 →Xのアカウントページ




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