なぜサービス残業があるのか?
働いた分だけ給料をもらうのがサラリーマンの仕組みです。 1日8時間労働が基本であり、その時間分の給料は「基本給」と呼ばれます。 残業をすると残業をした分だけ給料が支払われ、これが「残業代」です。
しかし、残業をしたのに残業代がもらえないサラリーマン、残業代をもらわずに残業をするサラリーマンは、 この世の中に無数に存在します。なぜ対価をもらえないのに働くのでしょうか。
「社会ってそういうもんだ」などと変に納得せず、サービス残業について考えてみましょう。
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サービス残業とは
サービス残業とは、1日8時間労働であるところ、 8時間を超えて働いた場合に会社から支給される時間外勤務手当をもらわずに残業をすることを指す言葉です。
残業代の支払いは労働法で義務付けられており、会社は、8時間以上働かせた場合は残業代を支払う必要があります。 しかしこの「残業代」を支払わずに残業をさせる会社が無数に存在します。
残業代の不払いは違法行為ですから、完全にブラック企業です。 残業代の不払いは横行しており、サラリーマン側も半ばあきらめてしまっていたり、 納得してしまっていたりするのです。
例えば定時間際に「これ、明日までにやっといて」と仕事を与え、 定時で帰らせなかった場合、「残業」が発生します。 残業をしたら通常なら残業代がもらえるのですが、この残業代をもらえない場合、サービス残業であると言えます。
他にも休日出勤をして、休日出勤手当をもらわない場合、 有給休暇をとったのに働いている場合、みなし残業制度で40時間分の残業代をもらい、 40時間以上にわたって残業をした場合も、サービス残業に含まれます。
要は「働いているのに正当な報酬を受け取っていない状態」をサービス残業というのです。
サービス残業の例
サービス残業はこのような単純なものばかりではありません。 以下のような例も、サービス残業です。
1.出張・外出
出張に出て、そのまま直帰する場合、たいてい残業代はつきません。 しかし、出張も残業になる場合があります。 それは「その行程で会社に帰ったと仮定した際、到着時刻が定時を過ぎていた場合」です。
よく「移動時間は働いていないから」という言い訳を聞きます。 しかし、働いているかどうかはパソコンで作業をしているかどうかではなく、 「会社の命令で動いているかどうか」です。
出張はもちろん会社の命令ですから、会社に戻って退勤するまでは「働いている」のです。 定時を過ぎるからとそのまま直帰する場合でも、定時を超えている限り会社は残業代を支払う義務があります。
出張に出ると、「日当」が付く場合があります。 日当には特に根拠となる法律はありませんが、この日当が残業代よりも少なければ、 「残業代-日当」分のサービス残業をしていることになります。
1.強制参加の飲み会やイベント
「飲み会や社内イベントは仕事ではない」という認識が強いと思います。 どんなに不払い残業代について文句を言う人でも、飲み会やイベントの時間分の残業代を請求する人はいません。
しかしこの飲み会やイベントが「強制参加」であれば、それは「働いている」時間に含まれるのです。
というのも、「働いている」の判断基準は「会社の命令で動いているかどうか」だからです。 強制参加の時点でそれは「会社の命令」です。本来であればただお酒飲んでいるだけでも、 社内イベントでボウリングをしているだけでも残業代が発生するはずなのです。
ちなみに「強制参加」を言うのがただ1人の部長だけであっても同じです。 部長1人の発言は会社の総意とは言えませんが、上司と部下は主従関係にあります。 上司の命令で部下が動いている以上は、「働いている」に含まれるのです。
なぜサービス残業があるのか?
なぜサービス残業があるのでしょうか。
理由の1つは会社の経費削減のためです。 売上高から経費を差し引いたものが会社の利益となります。 利益拡大のためには売上高をあげることも重要ですが、経費削減も重要です。
部品などの材料費を削減するには限界があります。 調達先の企業との関係もありますし、そもそも物自体の値段は簡単に下げられるものではありません。
一方で、社員の給料は比較的削減しやすい項目です。 「残業代」を払わないことで経費を圧縮し、利益を出すことができるのです。 (もちろん違法ですが)
これを行ってもバレにくいという状態が、サービス残業に拍車をかけています。 社員の生活は会社に依存しており、会社から解雇されると生活難に陥ります。 会社に嫌われたくないのです。
そのため会社から残業代の不払いがあっても、「しかたがない」と諦めてしまうサラリーマンが多いのです。 特に出世を期待する総合職はその傾向が顕著で、会社のためなら自分が損をすることをいとわないのです。
このパワーバランスの悪さを悪用し、会社は人件費を削減し、利益を出し、株主配当金を出すのです。
もう1つの理由は「時間」を軽視していることです。 時間を軽視しているのは会社も社員もどちらもです。 「奪われたもしくは奪った時間」ではなく「働いている」を評価するためにサービス残業が発生するのです。
サラリーマンも経営者もよくしている勘違いなのですが、 「働いたから給料がもらえる」という言葉は間違いであり、大嘘です。
もちろん働かなければ給料はもらえません。しかし、給料がもらえるのは「働いたから」だけではないのです。 もし「働いたから」というだけで給料がもらえるのであれば、ノルマを達成すれば遅刻しようが早退しようが、 出勤しなくても給料がもらえるはずです。
しかし現実にはノルマを達成しても、出勤しなくてはなりません。 なぜなら、会社はサラリーマンの「時間」と「労働力」の両方を買っているからです。
時間を売っているからこそ、サラリーマンは毎日出勤しなくてはならないのです。 ノルマを達成しても休暇を与えられるどころか次の仕事を与えられるのはそのためです。
しかし、日本人は「時間」に対する意識が低く、サービス残業を許容してしまいます。
日本人は時間意識が低い
なぜ日本人は「時間を売っている」という意識が低いのでしょうか。
原因はやはり、農耕民族だからです。
狩猟民族であれば獲物をしとめればその日の仕事は終わりです。 持ち帰って料理し、食べるだけです。狩りが早く終われば早く終わるほど自由時間が増えます。
一方で農耕民族は、春先の種まきから秋の収穫までが仕事です。 「1日どこまでやれば終わり」というものがないのです。 日が昇り、日が沈むまで働き秋の収穫を待つのです。
「仕事に終わりがない」ことに慣れてしまっているために、 会社に入っても同じく仕事を終わらせようとしません。 今の仕事が終われば、次の仕事をはじめるのです。
そのため「早く終わって自由時間をつくろう」という意識が希薄です。 ノルマ達成後にいくら大量の仕事を押し付けられても受け入れてしまう土壌があるのです。 「時間を売っている」よりも「仕事をしている」という意識の方が強くなってしまうのです。
サービス残業根絶は意識改革から
サービス残業を根絶するには、意識改革が必要です。
まず、「働いたから給料がもらえる」ではなく「時間と労働力を売っている」ことを自覚しましょう。 もちろんサービス残業の根絶には自分がそう思っているだけでは足りず、 あらゆる人が同じように思わなければならないのですが。
無限にあるお金で、有限である時間を安値で買いたたかれている現状を直視し、 時間を大切にするように心がけましょう。
そして、サービス残業は大事で有限な「時間」を無料で会社に捧げる行為です。 報酬すらないのですから奴隷以下です。 この異常な事態を「会社ってそういうものだから」と納得してはいけません。
そもそも時間を売る行為自体、褒められたことではありません。 お金は無限に存在しますが、時間は有限なのです。 1億円積もうが、過去には二度と戻ることができません。
それだけ価値のある時間を1時間1000円~数千円で売り飛ばしてしまっているのです。 ましてやサービス残業など時間を無償提供しているのですから、 ありえないことです。
このように考える人が増えればサービス残業はなくなっていくはずですし、 それを強要する上司や経営者もいなくなっていくでしょう。
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著者:村田 泰基(むらた やすき)
合同会社レセンザ代表社員。1989年生まれ。大阪大学法学部卒。2013卒として就活をし、某上場企業(メーカー事務系総合職)に入社。
その後ビジネスの面白さに目覚め、2019年に法人設立。会社経営者としての経験や建設業経理士2級の知識、自身の失敗経験、300冊以上のビジネス書・日経ビジネスを元に、11年間に渡り学生の就職活動を支援している。
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