MY就活ネット
リアルタイム閲覧者数:9人

奨学金が返せない!~奨学金で自己破産

 奨学金が返済できず、自己破産する方が増えているようです。 この記事では「なぜ返済できなくなるのか」「それを自己責任で片づけていいのか」などを解説します。



おすすめ・人気記事

 

奨学金で破産した実例

 例えばこのような事件があります。

 男性は父親が事業に失敗した影響で、1990年の高校入学時から大学卒業まで日本学生支援機構から無利子の奨学金を借りた。 高校時は毎月1万1千円、大学時は同4万1千円で、当初の返還期間は93年12月から2012年9月。多いときで年約16万円を返還する計画だった。

 だが、大学3年時に精神疾患を患ったこともあり、大卒後に就職できず、計9万2千円を支払っただけで滞納。 アルバイトをして生計を立てる生活で、返還期間の猶予も受けたが、返せなかったという。昨年8月、返還を求めて機構が提訴。 同11月、未返還の奨学金と延滞金の計約283万円の支払いを命じられた。

 男性は現在、二つのアルバイトをしており、収入は手取りで月約14万円。 光熱費や家賃、家族への仕送りなどを差し引くと、生活費は2万円ほど。貯金はなく、返還のめども立たないことから、 自己破産の申請に踏み切った。開始決定は今月4日で、債権者から異議申し立てなどがなければ4月にも破産が決まる。

 (参照元リンク切れ)

 1990年代の大学生で、高校入学時から第一種の奨学金を借りていたようです。 高校3年間で1万1000円×36ヶ月=39万6000円と、大学4年間で4万1000円×48ヶ月=196万8000円。 合計して高校入学から大学卒業までで236万4000円の借金ということになりますね。

 返済期間は15年程度です。この236万4000円の借金を、15年で割り、月あたりに直します。 毎月の返済額は1万3000円程度ですね。

 大学卒業時に正社員として就職できていれば何ら問題ありません。 月収20万円のうちの月1万3000円なら、簡単に返済できます。 正社員として就職したサラリーマンの大半は、奨学金を簡単に返済できます。

 しかし、正社員としての就活に失敗すると話は別です。

 記事中の男性のように、月収10万円そこそこのフリーターの場合、毎月1万3000円の返済はとてつもなく大きな金額です。 奨学金が返せず、自己破産する人も今後増えて行くでしょう。

 

なぜ奨学金を返済できないのか

 奨学金返済できない理由は深刻です。

 まず、就活正社員の内定をもらえる大学生が少なくなっているという理由が挙げられます。 かつての仕事の多くはパソコンや機械に取って代わられ、たくさんの正社員を採用する必要がなくなってきました。 さらに、派遣社員でまかなう会社も増えており、大卒正社員の求人は減る一方です。

 そして1990年代の就職氷河期、2008年以降の就職超氷河期という就職が厳しい時代もあり、 正社員ではなく、派遣社員としての就職を余儀なくされた大学生、フリーターにならざるを得なかった大学生も多く存在します。 これを単に「自己責任」で片付けるには複雑すぎる問題です。

 大卒なら90%以上が正社員として就職できていた時代もあれば、 90%を大きく下回る時代もありました。給料の少ない派遣社員やフリーターとして就職せざるを得なかった大学生は、 安い給料から生活費を支出し、奨学金の返済まで捻出しなくてはなりません。

 正社員だと毎年定期昇給があり、だんだん奨学金の返済が楽になっていきます。 一方で昇給のない派遣社員やフリーターだと、奨学金の返済は苦しいままです。

派遣が社会を滅ぼす|多すぎる!不景気の悪循環

 一度失敗するとやり直しがきかない日本社会では、最初に正社員として就職できなければ、 派遣社員やフリーターから正社員にランクアップするのは非常に難しく、 復活を図ることが事実上困難です。

 ここで、もう一つの理由が浮上してきます。 そもそも大学へ行かずに高卒で就職すればよかったのではないかという人もいます。 しかし、大卒でないとホワイトカラーの仕事にはありつけないという問題があります。

 ブルーカラーは待遇が悪いことも多く、派遣社員が認められている昨今では、 ブルーカラーの正社員での採用も減り、派遣社員や期間工に取って代わられています。 大卒でないと就職が難しいために、奨学金を借りてでも大学に行かざるを得ないというのも大きな理由です。

 なぜ会社が大卒にこだわるかというのは、くだらない理由です。 「優秀であるかを見分けるのに簡単な指標であるから」です。 高卒より、東大卒のほうが優秀である可能性は非常に高いわけです。

 あらゆる高校生を相手に採用活動をするわけにもいきませんし、 少なくとも受験戦争を突破している大卒を放っておいて高卒を採用するより、 そもそも大卒に限って採用したほうが優秀な新入社員を獲得できる可能性が高いのです。

 一番の問題は景気が悪いということです。 景気が悪いために採用人数は絞られ、会社は正社員を減らして派遣社員やフリーターを募集し、 十分な給料を得られる人が減っているのです。

 景気が悪くても大卒でなければ就職できない状態は変わりません。 苦しい生活費を切り詰めたり、奨学金を借りたりして子どもを大学へ行かせるのですが、 それでも就職できないのですから大変です。

 

奨学金問題は自己責任とは言えない理由

 まず、努力が足りなかったというような精神論は置いておきましょう。 いくら努力したところで、正社員の募集人数を増やすことなどできません。 自己責任というにはあまりに難しい問題です。

 奨学金を借りるのは、もちろん「大卒資格」を得るためであり、 就職に有利になるはずの資格でした。借金をしてでも大学へ行き、 卒業して就職すれば奨学金以上にリターンがあると信じられていました。

 しかしバブル経済が崩壊し、大学を出ても就職できないという異常事態が発生したのです。

 これを自己責任とは言えないと思います。

 また、なぜ国立大に行かなかったの?という声も聞こえてきますが、これも間違いです。 もはや国立大と私立大の間で、学費に大きな差はありません

 

昔に比べ学費は跳ね上がっている

 国立大なら借りる奨学金も少なく済み、返済が楽だったのではというのですが、 残念ながら国立大の学費は昔ほど安くありません。

 私立大学4年間でかかる学費は400万円~450万円で、 一方国立大学4年間なら学費は250万円です。 これだけ見れば国立大学の学費は安く、私立大学の学費は高いように思えます。

 しかし、昔に比べて国立大学の学費はかなり上がっています。 私立大学だと奨学金の返済が厳しくなるのはもちろんですが、 国立大学も返済が楽になるわけではありません。

 昔、大卒初任給が6万円だったころ、国立大学の学費は1年で6万円でした。 初任給で学費1年分が払えた時代があったのです。 今では初任給は20万円程度で、国立大学の学費は年間53万円です。 3ヶ月働かないと学費を払えません。

 このことを考慮すると、国立大学の学費は昔に比べて3倍になっているといえます。 国立大に入ったところで、学費が高いのには変わりません。

 大学に行かずに就職すればよかったのでは?という人もいます。 あまりにもひどい言い分です。生まれた家庭の経済状況によって大学進学を諦めなければならないのなら、 皆の嫌いな「既得権益」と「世襲制」の社会そのものです。

 これを解消し、誰でも大学へ行ける制度が「奨学金」であり、「授業料免除」制度だったのです。 免除はともかく、奨学金の制度は今の時代に合わなくなってきています。

 

昔よりインフレ率が低い

 奨学金は、学生ローンです。奨学金というマイルドな名前にはなっていますが、 実質的に借金であることに変わりはありません。無利子でも有利子でも、「貸与」である限り返済の義務があります。

 昔は奨学金を借りて大学に行くのがオトクでした。それも、 大卒で正社員になれる可能性は非常に高く、年々給料が上がり、景気は上向くという、 好景気の時代にあったときです。

 毎年インフレしつつ定期昇給があると、毎年奨学金の返済は楽になっていきました。 年収100万円のときの返済額13万円と、年収1000万円のときの返済額13万円では、 後者のほうが圧倒的に楽なのです。

 しかし今は逆です。1990年代からデフレが続き、インフレ率は0%を割り込みました。 給料は下がるのに奨学金の返済額は変わりません。だんだん返済が厳しくなっていったのです。

 さらに、大卒の就職率の悪化に伴い、さらに返済できる見込みがなくなってきました。 仮に正社員で就職できてもいつ会社が倒産するかわかりませんし、 景気も悪く昇給もあまり見込めません。

 何年経っても奨学金の返済が楽にならないことも簡単に想像できますね。

インフレ・デフレは庶民にも関係大あり!

 

授業料免除を使おう

 私は国立大学でしたが、大学には4年間で40万円しか払っていません。 正確には入学金と、1年生前期の学費の半額しかおさめていません。 普通に払っていたら250万円かかったはずです。しかし、40万円で収まったのです。

 これは、授業料免除によるものです。 特に学業が優秀であったわけではなく、単に世帯年収が低かったために授業料免除を受けられたのです

 こういう制度は私立大学にはなかなかありませんが、国立大学で儲かっている大学なら、 授業料免除制度が実は充実している場合があります。

 私の在籍していた大阪大学には授業料免除制度がありました。 大々的に宣伝されている制度ではなく、学生課へ行ったら授業料免除のしおりがおいてあり、 ダメ元で応募してみたら免除されたというものです。

 ちょうど私が大学へ入学する前の年に、父が失職しました。 世帯年収は700万円ありましたが、翌年には300万円まで落ちたのです。 大変な出来事でしたが、私は1年生の後期からは無料で大学に通うことができたのです。

 人間万事塞翁が馬ですね。

 大学のホームページを入念に調べてみると、授業料免除のことが書かれている場合があります。 大阪大学の他では、東京大学で世帯年収が400万円以下なら授業料免除という制度がありました。 どちらも大学病院で稼いでいる大学です。

 志望校の学生支援の制度をしっかり調べてみるのも一つの手ですね。

コラム記事の一覧に戻る

著者:村田 泰基(むらた やすき)
 合同会社レセンザ代表社員。1989年生まれ。大阪大学法学部卒。2013卒として就活をし、某上場企業(メーカー事務系総合職)に入社。 その後ビジネスの面白さに目覚め、2019年に法人設立。会社経営者としての経験や建設業経理士2級の知識、自身の失敗経験、300冊以上のビジネス書・日経ビジネスを元に、11年間に渡り学生の就職活動を支援している。 →Xのアカウントページ




×