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無借金経営は危険!?~スカイマーク倒産に学ぶ

 スカイマークの倒産事例から、無借金経営は危険な側面も持つことが学べます。 一見健全経営に見えますが、その何が悪いのか、ここでは無借金経営の危険さをお伝えしようと思います。 (この記事は2024年7月23日に更新しています)



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スカイマークはなぜ倒産したか

 2015年のことですが、スカイマーク倒産しました。 倒産の前兆はあったのですが、多くの方々は気付いておらず、 スカイマークの株価はむしろ上昇傾向にありました。

 スカイマーク倒産が突然のことで、びっくりな出来事なのも無理はありません。 スカイマークは2013年度まで数十億の純利益を出しており、 しかも無借金経営だったからです。

 スカイマークの決算短信や有価証券報告書を見てみると、 「負債の部」に「短期借入金」「長期借入金」「社債」といった項目がありません。 実は、スカイマークは借金がなかったのです。

 それでもスカイマークは倒産してしまいました。 いったい何が悪かったのでしょうか。

 

理由:資金繰りのショートで倒産

 資金繰りのショートで倒産という言葉はよく耳にすると思います。 これは実は借金が膨れ上がって返済の目途が立たないという意味ではなく、 現金がなくなったということを意味する言葉です。

 各種の支払期限までに現金が準備できなければ、会社は倒産します。

 特に滞ってはいけないのが約束手形の支払いや、当座預金です。

 約束手形の支払いが遅れることを、不渡りといいます。 不渡りを2回出してしまうと銀行は取引を停止します。 借金どころか決裁すらできなくなるため、お金のやり取りができなくなって倒産します

 当座預金の現金が底をついたときも同様です。 当座預金にお金がなければもはやお金を支払うことはできません。

 スカイマークの場合、現金が底をつき航空機代の支払いができなくなって倒産しました

 借金が膨らんだわけではありません。なんとスカイマークは倒産してもなお、借金が1円もないのです。 しかし、よく見てみると2013年3月に230億円あった現金が、2014年3月には70億円まで減少し、 2014年12月時点ではたったの7億円しかありません。

 現金が急激に減少し、航空機代を支払うことができなくなったことが、 スカイマークの倒産の原因です。

 関連して、企業選びの際に「売上高」だけを見てしまいがちですが、 それの何が悪いのかについて次の関連記事で解説しています。

【関連記事】 【就活】売上高に惑わされてはいけない!賢い会社選び  

スカイマークとパナソニックやシャープの違い

 すると気になるのは、大赤字を連発しても倒産しなかったシャープパナソニックです。 パナソニックは当時2年連続で7700億円、7500億円の巨額赤字を計上し、 シャープは未だに経営難から脱出できておらず、2015年も300億円の赤字となる見込みです。

 一方でスカイマークは2015年に初めて赤字をだし、それも130億円です。 パナソニックやシャープの何千億円という大赤字に比べたら全然大したことはありません。 なぜスカイマークの何十倍もの赤字を出したにも関わらず、パナソニックやシャープは倒産しなかったのでしょうか。

 実は、パナソニックやシャープが倒産しない理由は、借金にあります。

 パナソニックが7500億円の大赤字を出した2013年3月、パナソニックには1兆円もの借金がありました。 シャープも2015年の時点で1兆円もの借金があります。 普通の考え方では、1兆円もの途方もない借金と聞くと「倒産秒読みではないか!」と思うものです。

 しかしパナソニックもシャープも倒産していません。 「借金があるから倒産しない」とも言えそうなくらい、驚きの状態です。

 1兆円の借金をしているということは、1兆円を貸している人がいるということです。 もちろん貸しているのは銀行です。もしもパナソニックやシャープが倒産してしまったら、 銀行は莫大な不良債権を抱えることになりますので、パナソニックやシャープが倒産すると困るのです

 そこで銀行はパナソニックやシャープに「追加融資」を行いました。 資金繰りがショートしないように、現金を追加で貸したのです。 なんとか黒字に持って行ってくれれば不良債権を抱えずに済みます。

 つまり、パナソニックやシャープは銀行が味方だったというわけです。

 一方のスカイマークは無借金経営でした。銀行からは1円もお金を借りていません。 逆に言えば、銀行はスカイマークが倒産しても困らないというわけです。

 純利益が年々減っているスカイマークにわざわざ融資する理由がなかったのです。 スカイマークの資金繰りがショートしても銀行は困りませんし、 進んで赤字企業に融資して不良債権のリスクを抱える必要は全くないのです。

 スカイマークは銀行を味方につけていなかったというわけです。

 別の見方もあります。パナソニックやシャープは1兆円の借金がありますが、 逆に言えば1兆円も貸してもらえるほど信用があるということです。

 サラリーマンが1兆円借りようと思っても、誰も貸してくれません。 絶対に返済できないことがわかりきっているからです。

 しかし、パナソニックやシャープは将来的に立ち直り、1兆円の借金も返済可能であると、 銀行が判断したわけです。もちろん1兆円の借金の時点で、銀行がパナソニックやシャープに復活の可能性はないと見捨ててしまえば、 パナソニックやシャープも倒産していたかもしれません。

 しかし、今すぐ1兆円の不良債権を抱えるか、もっとお金を貸して復活を待つかの選択に迫られた際、 銀行はパナソニックやシャープの復活に期待したわけです。

 巨額の借金をして銀行を味方につけていたパナソニックやシャープに対して、 無借金経営をして銀行を味方につけていなかったスカイマークは、 いざ困った時に銀行が助けてくれなかったというわけです。

 

スカイマークの倒産の原因

 スカイマーク倒産原因は、 エアバスA380という航空機の購入です。

 エアバスの航空機を6機購入するにあたり、1915億8500万円を見込んでいました。 これを無借金でまかなおうとしていたのですから、無謀とも言えます。

 結局スカイマークは事業で赤字となり、エアバスへの代金支払いが滞り、 エアバスから契約解除、違約金の請求を言い渡され、ついに現金が底をついて倒産となったわけです。

 もともと現金が数百億円しかないのに1915億8500万円の買い物を、また無借金で行うなど、 無謀すぎるのではないかと思います。銀行から融資を受けて購入するべきものでした。

 日ごろから無借金であり、銀行との付き合いの浅かったスカイマークは、 そもそも銀行からお金を借りることができなかったのかもしれません。 それが仇となって、資金繰りがショートしても、銀行から追加融資を受けることができなかったのです。

 無借金経営は現金が底をつくというリスクに対処できないため、実は非常に危険なのです。 それどころか新しく機材に投資しようとして倒産してしまう場合だってあるのです。

 

倒産しない秘訣は現金と借金

 企業が倒産しない秘訣は、現金借金です。

 現金が必要なことは確かです。取引先への支払いができなくなったり、 支払手形など銀行との取引でミスを犯せば倒産確実です。 ある程度のキャッシュフローは確保しておかなければなりません。

 そして、実は借金も、倒産しないために必要なのです。

 家計では一般に、借金は悪であり、破産への入り口であると言われます。 確かに自分の自家用車やマイホームを買う借金は悪です。 消費者金融からお金を借りて遊びに使ったり、生活費に使うのでは破産の第一歩です。

 家計の借金は、給与所得を担保にしてお金を借りるやり方です。 クビになったりリストラにあったり、給料が減ったりすれば返済できなくなる可能性があります。 借金が膨らんで返せなくなる人もいます。

 しかし企業も同じだと考えてはいけません企業が銀行からお金を借りるのは、売上を伸ばし、利益を増やすためです。 銀行も企業の投資活動に納得し、「返済可能である」と判断して初めて融資が実現します。

 銀行は企業に融資する際、企業の計画に賛成し、儲かると判断して融資するのです。 「給料がこれだけあるから大丈夫だろう」で貸してくれる家計の借金とはわけが違います。

 企業の借金は何百億円、何千億円にもなる莫大な金額です。 それだけ銀行は慎重に企業を調べ、企業の計画を調査し、 稟議に回して行内の決裁を取ってようやく融資が決定します。

 これだけやって企業が失敗し、赤字を背負った時に、 借金をしていたから助かったという事象が発生します。

 「莫大なお金を貸しているのに倒産されては困る」という銀行の危機です。 融資した金額が大きければ大きいほど、倒産された時に銀行の不良債権が増えてしまいます。

 パナソニックやシャープのように、何千億円から1兆円といったお金を貸していた場合、 倒産されると銀行の儲けが一気に吹き飛んで銀行も連動して大赤字を計上してしまいます。

 銀行はなんとか融資した企業の倒産を食い止めなければ、 自分が大変なことになってしまうわけです。

 そういうわけで、儲かっているときにしっかり借金をしておけば、 いざ困った時に銀行が助けてくれるのです。 企業の場合、「借金があるから危ない」ではなく「借金がないから危ない」なのです。

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著者:村田 泰基(むらた やすき)
 合同会社レセンザ代表社員。1989年生まれ。大阪大学法学部卒。2013卒として就活をし、某上場企業(メーカー事務系総合職)に入社。 その後ビジネスの面白さに目覚め、2019年に法人設立。会社経営者としての経験や建設業経理士2級の知識、自身の失敗経験、300冊以上のビジネス書・日経ビジネスを元に、11年間に渡り学生の就職活動を支援している。 →Xのアカウントページ




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