フジテレビ給与カットか
視聴率不振に喘ぐフジテレビが、開局以来の大リストラに着手する。今回、リストラの目玉といわれているのが、人件費=年収の大改革案だという。 今回、フジ上層部が年収改革に着手した理由は、年末年始(12月29日~1月4日)の週間平均視聴率ゴールデン&プライム帯で、まさかのテレビ東京に大惨敗を喫したこと。 しかも1月4日は、全日も含めた3部門すべてにおいて負けてしまったのだ。
「スポンサーからのクレームも止まらない。高すぎる局員の年収を下げないとスポンサー離れがどんどん加速するんです。 視聴率競争でトップを行く日テレの給与の低さを見れば、効率の差は歴然としている。日テレのやり方を手本に、 抜本的改革に取り組む方針です」(編成関係者)
「フジの場合、制作現場に配属されれば残業が青天井に付くため、30歳で年収は約2000万円~というのは有名な話。仮に2割カットされたとしてもまだ1800万円。 しかも福利厚生がしっかりしていて、持ち家率はテレビ界でトップ。 加えて、多くが不動産投資物件を所有するなど財テクにも余念がない」(大手広告代理店関係者)
「30歳平均の年収はテレビ朝日が1600万円、TBSが1500万円、テレ東が1200万円、日テレ1200万円。ただし日テレの場合は年俸制を採用しているため、 9割以上の局員は700万円にしかならない。残り一割の局員が底上げをしているんです。いずれにせよフジはズバ抜けて高い」(制作会社関係者)
就活でも激戦区なテレビ局の中でも、ずば抜けて年収の高いフジテレビですが、 その高い年収に切り込みが入るようです。
「2000万円を2割カットしたら1600万円でしょ!」というツッコミはさておき、 残業が異常に多い会社で残業代ががっつり全額つくのは珍しいですね。 しかしいくら残業代がフルでついても、やはり基本給が高くなければ年収2000万円など到底不可能です。
テレビ局は初任給がそもそも高く、フジテレビで24万5500円、テレビ朝日で24万3030円、テレビ東京で23万7600円です。 初任給の平均が20万円前後であることを考慮すると3万円も4万円も高いんですね。
高すぎる初任給が設定されている企業は昇給が少なかったり、 残業代も込みで計算されていたりといろんな罠があるものですが、テレビ局は違うようです。
昇給も大きく、ボーナスも年4回出ますし、残業代もがっつりつくことで、 30代で年収2000万円も可能なのです。
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最大の既得権益テレビ局
一時期テレビでは既得権益を叩く維新の会をプッシュすることもありましたが、 実はテレビ局が一番の既得権益の塊なのです。
というのも、使える電波には限りがあり、電波使用権は今あるテレビ局で独占しているのです。 電波使用料も非常に安く、イギリスでは年間850億円かかりますが、日本ではたったの42億円で電波が使えるのです。
独占なのでもちろん競争はなく、電波使用権を数社で独占して莫大な利益を得てきたわけです。
普通の民間企業ではなかなか考えられない高い年収を得ておきながら、 政権批判をする際に「庶民感覚がわからない」などと批判していたのですからおかしな話ですね。 テレビ局こそ庶民感覚から離れたお金持ち集団だったのです。
テレビはこれまで最強の広告宣伝媒体でしたから、広告を出したい会社はこの数社のテレビ局から選んで、 スポンサーになるしかありませんでした。高い広告料を支払い、テレビ局各社の高給待遇を支えてきたわけです。
しかし、テレビ局の黄金時代も終焉に近づいています。
というのも、インターネットという新しい広告媒体ができ、 これまでテレビを観ていた消費者がテレビ離れを起こし、 インターネットに流れていったためです。
中にはテレビ局の偏向報道に反感を抱いた人、 テレビ局の良すぎる待遇に反感を抱いた人、「ヤラセ」などに辟易してテレビを観るのをやめた人もいます。
ただ広告が流れているだけのテレビよりも、検索履歴を元に閲覧者の興味のある広告を表示し、 広告に興味をもってクリックしてくれる消費者のほうが売り上げに直結しやすいのです。
もちろんテレビも不特定多数の大勢に広告を見せることができるので、 知名度を上げる、客を増やすという点ではかなり有力な広告媒体です。 しかし、視聴者が減っているのではどうしようもありません。
給料2割カットでもまだ高給
さて、フジテレビの給与カットの話題ですが、年収2000万円を2割カットしたとしても、 1600万円残るわけです(記事中では1800万円となっていますが)。 普通の民間企業ではまだまだ考えられない高い給料ですね。
しかし、独占状態であることを無視すれば、まだ納得のいく給料です。 というのも、テレビ局はあまりにも忙しすぎるからです。
テレビに情報を流すということは、コンプライアンスにも気を付けなければなりませんし、 様々な放送禁止用語に注意し、いじめにつながる内容を排除し、 これまでのクレームにも配慮してなおかつ面白い番組を作らなければなりません。
番組制作会社を指揮し、24時間営業のテレビ局で深夜までどころか朝まで働き続けなければなりません。 残業時間はあまりにも多すぎますし、その分ちゃんと残業代が支払われることに関しては、 何の問題もありません。
しかしながら、テレビ局の問題点はその独占状態にあります。 郵便やJR、高速道路、電力会社などの独占状態はすぐに批判する割に、 自分たちが最大の既得権益であることには触れません。
これでは誰も減給に同情しませんし、もし倒産してしまっても喜ぶ人すらいるでしょう。
テレビ局は独占状態を解消するなり、残業時間を抑えて年収を低くするなり、 庶民の理解が得られる企業に変質しなければいずれ制度を思いっきり変えられてしまうでしょう。
給与カットの与える影響
フジテレビは安易な給与カットはするべきではないでしょう。 「テレビが面白くない」とよく言われていますが、給与カットによってテレビが面白くなるわけではありません。 給与カットが与える影響について考えてみましょう。
まず、社員の士気低下につながります。 「今までがもらいすぎていたんだ」という意見もあるでしょうが、 元はどうあれ減給は減給です。士気の高まりにはつながらないでしょう。
また、残業代カットもよくありません。残業代カットは、残業時間をなくすことによって行うべきです。 もしも残業代に上限をもうけて、それ以上は払わないとしたら、 もっとテレビ番組のクオリティは下がってしまうでしょう。
給与カットは下請け会社へのパワハラへつながる可能性もあります。 テレビ局の社員はかなりのストレスを抱えながら働いているわけですが、 年収が下がれば余計にストレスになるでしょう。
給料はストレスの代償だと思います。もしも給料をカットしてしまえば、 そのストレスの矛先は下請け会社に向き、番組制作会社が苦労することになってしまうでしょう。 そうすればさらに番組クオリティが下がり、客足が遠のいてしまいます。
テレビ局が給与カットしたんだからウチも仕方ないでしょと、下請け会社も給与カットの憂き目に遭う可能性があります。 やはりテレビ局はそれだけ大企業ですから、関連会社への影響も考慮しなければなりません。
もちろん視聴率が低下しているので、売上や利益が落ち、 原価圧縮をしなければならないのも確かでしょう。 しかしまずは、利益拡大のために営業状況を改善するところから始めるべきです。
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著者:村田 泰基(むらた やすき)
合同会社レセンザ代表社員。1989年生まれ。大阪大学法学部卒。2013卒として就活をし、某上場企業(メーカー事務系総合職)に入社。
その後ビジネスの面白さに目覚め、2019年に法人設立。会社経営者としての経験や建設業経理士2級の知識、自身の失敗経験、300冊以上のビジネス書・日経ビジネスを元に、11年間に渡り学生の就職活動を支援している。
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