「社会人」ってそんなに偉いの?
社会人とは、一般的に「社会に参加し、主に労働する人」を指す言葉です。 特に日本では、新入社員に対しては「社会人としての自覚を持て」、学生には「社会人になってから言え」といった形で使われることが多くあります。 また、「俺、社会人だから」という表現のように、自らの立場を誇示するような使われ方をすることもあります。
このような文脈では、以下のような誤った階級意識が見られることがあります。
- 社会人は専業主婦より上である
- 社会人は学生より立派である
- 労働している人間こそが「一人前」である
しかし、本当にそうなのでしょうか?「社会人」という言葉の意味と、それにまつわる価値観について、今一度考えてみましょう。
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社会人とは?定義と本来の意味を見直す
社会人とは何か? 多くの人が「会社勤めをしている人」や「労働者」を思い浮かべるかもしれません。 しかし、そもそも社会人の定義とはどういったものでしょうか。
「社会」の本来の意味
「社会」とは、以下のような人と人とのつながりから成り立つ概念です。
- 一定の人間の集合体
- 組織化された人間の集団
この言葉は様々な場面で使われます。
- 日本人全体 → 「日本社会」
- 世界規模 → 「国際社会」
- 特定の地域 → 「地域社会」
- 性別に限定 → 「女性社会」「女社会」
誤解されがちな「社会人」の定義
現在の一般的な使われ方では、「社会人」に以下の人々は含まれていません。
- 学生
- 専業主婦
これは「学生や主婦は社会を構成していない」という誤った見方によるものです。
本来の意味での社会人
実際には、社会の構成員とは人と関わりを持つすべての人を指します。
- 専業主婦:選挙権を持ち、消費者であり、家庭の構成員
- 学生:学校や家庭の構成員であり、消費者としても社会に関わっている
労働者に限らず、人と関わる全ての人が社会人であると考えるのが自然です。
なぜ「労働者=社会人」という誤解が生まれるのか
労働者が存在できるのは、以下のような他の社会構成員がいるからです。
- 消費者がいなければ商業は成り立たない
- 学生がいなければ学校は存在しない
それにもかかわらず、「社会人=労働者」と限定的に使われることで、以下のような矛盾が生じます。
「社会人は大変だ」という認識の偏り
よく聞くフレーズに以下のようなものがあります。
- 社会人は時間がない
- 社会人は忙しい
- 社会人は辛い
これらは主に会社員(サラリーマン)として働く人々に当てはまる特徴です。
労働者以外の社会人たち
以下のような人々も社会の一員ですが、「社会人」として扱われにくい傾向があります。
- 投資家や資産家
- 株・FXのトレーダー
- 漁師、農家、自営業者
これらの人々は時間に余裕がある場合もあり、「忙しい」や「辛い」といった特徴に必ずしも当てはまりません。
「社会人=サラリーマン」の危険な思い込み
多くのサラリーマンは自分の働き方しか知らないため、「社会」とは労働者、すなわちサラリーマンだと誤解しています。
この誤解により、次のような意識が生まれます。
- 自らを「社会人」として特別視する
- 学生や専業主婦を「社会人ではない」と見下す
このような意識は差別や排除の温床にもなり得ます。
「社会人」は本当に偉いのか?
社会人=偉いというイメージは、どこから来るのでしょうか?特にサラリーマンがこのような意識を持ちやすい傾向にありますが、その根拠を見直してみましょう。
働く人はなぜ偉いと思われるのか?
サラリーマン的な「社会人」が働くことで発生することは、以下のような点です。
- 企業の命令に従って物やサービスを提供する
- 経営者に利益をもたらす
- その対価として経費扱いの給料を受け取る
- 消費活動により、さらに別の企業に利益をもたらす
この中で特別なことはあるのか?
上記の行動の多くは、他の立場の人でも行っています。
- 専業主婦も、家庭内でサービスや食事の提供などを行う
- 学生や主婦も日常的に買い物をして企業に利益を与えている
- アルバイトでも経営者に利益を与え、給料を得ている
つまり、サラリーマン特有の「偉さ」は、実際には経営者の利益に貢献することと、給料を経費としてもらうことに限定されます。
納税で偉い?本当にそうか?
「社会人は納税しているから偉い」と主張する人もいますが、それは本当でしょうか?
- サラリーマンの納税額は、所得税などで月々5,000円~数万円程度
- 自営業者や資産家、投資家はそれ以上に高額の税金を納めている
- キャバクラの女性やスナックのママも多くの納税をしているケースがある
また、消費税に注目すれば、専業主婦や学生の方が高額納税者というケースもあります。
- 年間100万円を消費すれば、8万円の消費税を納めている
- 家庭での支出を担う人ほど、実質的な納税額は大きい
結論:「社会人=偉い」は偏った考え方
働いているだけで偉いという考えは、実態に即していない可能性があります。 さまざまな立場の人が社会を支えており、「社会人」の定義ももっと広く柔軟に捉える必要があるのです。
なぜ「社会人」は偉そうに見えるのか?
「サラリーマン」と「専業主婦」や「学生」の違いは何か――。その大きな違いは、外貨の獲得にあります。 いくら専業主婦や学生が家事を担っても、家族を支える労働者が「お金」という外貨を稼いでこなければ、生活は維持できません。
「家庭の大黒柱」としての自覚
このような背景から、多くの社会人は「自分は家庭の大黒柱である」と自負するようになります。
- 家計を支える役割を担っている
- 生活費の大半を稼いでいる
- 自分がいなければ家庭が回らないという意識
確かに、家庭内では大きな責任を負っている存在でしょう。
それでも「偉そうにする理由」はない
とはいえ、その「大黒柱意識」は家庭内に限った話です。他人の家庭の主婦や学生には何の関係もありません。
他人のために特別な貢献をしていない限り、「俺は社会人だから偉い」と胸を張る理由はないはずです。
なぜ社会人は「偉い」と言いたがるのか?
社会人が偉そうに見えるのは、次のような心情からくるものでしょう。
会社のためにやりたいことを我慢し、上司の理不尽に耐えて働いている。
そうして得た給料で家族を養っている。
こんな苦しみを知らない専業主婦や学生より、自分は偉いと思いたくなる――。
納税額と「偉さ」の話
私自身も今では社会人の一人ですが、それでも「社会人が偉い」とは思えません。
私が偉いと思う基準は、納税額です。しかし、ほとんどのサラリーマンが支払う税金は、月々数千円~数万円程度に過ぎません。
それはまさに「どんぐりの背比べ」ではないでしょうか。
本当に偉いのは誰か?
- 自営業者:事業税や所得税を一人で支払う
- 投資家:投資利益の20%を税金として納付
- 起業家:法人税を支払う規模まで事業を成長させた人物
このような人たちこそが、実際に多くの税を納めており、社会に大きな経済的貢献をしていると言えるでしょう。
年間数十万円の納税で「偉い」と誇るサラリーマンが、それほど立派な存在であるとは思えないのです。
「社会人」と自称するのはやめよう
「社会人」という言葉を自称することは、実は少し恥ずかしいことかもしれません。
なぜなら、「社会人」という言葉を使う人の多くが、「社会」の本当の意味を理解していないからです。
すべての人が社会の構成員であるという基本を無視し、あたかもサラリーマンだけが社会の中心であるかのように誤解している人もいます。
「社会人=会社員」ではない
「専業主婦や学生よりも社会と接しているから社会人だ」という人がいますが、これは大きな誤解です。
そもそも、以下のような指摘ができます。
1つの会社で働いただけで「社会」を語るな!
それは「社会人」ではなく「会社人」ではないか?
会社員が見ている「社会」は狭い
サラリーマンが関わるのは、基本的に自分の属する業界とその取引先に限定されます。
- 食品メーカー勤務者が、半導体業界の人と関わる機会は少ない
- 飲食店スタッフが、プラントエンジニアリング業界と関わることもほとんどない
専業主婦や学生のほうが広い人脈を持つことも
一方で、会社に勤めていない人たちも、さまざまな形で社会と接点を持っています。
- 専業主婦:井戸端会議や買い物で多様な人と関わる
- 学生:ゼミ・サークル・インターンなどを通じて社会人や起業家と接する
「会社に勤めているか」は社会性とは関係ない
会社で働いているかどうかは、社会との関わりの広さや深さを決定づけるものではありません。 むしろ、社会とは業界を超えて多様な人々が関係し合って成り立っています。
要するに、あらゆる人が社会の一員であり、社会人なのです。 会社員だからといって高尚でも、崇高でもありません。
「社会人」と自称することで自分を特別視するのは、かえって恥ずかしい行為になりかねません。 これからは、その言葉を使う前に、少し立ち止まって考えてみましょう。