テレビは時代遅れ
「若者のテレビ離れ」が叫ばれて久しく、今では若者に限らずあらゆる年代でテレビ離れが進んでいます。 今では高齢者以外、ほとんどの世代で「テレビよりYoutube」という時代が到来しています。 この状況はもはや、テレビは時代遅れと言わざるを得ません。なぜテレビは時代遅れになってしまったのでしょうか。
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時代に逆行するテレビ業界
「4Kテレビは録画禁止」という報道がありました。4Kテレビの放送が目前に控えていますが、 テレビ局側として録画を禁止しようというのです。いまどき決まった時間にテレビの前に居られるなんてことは滅多になく、 残業して帰宅すればもう寝る時間・・・なんてこともザラです。だからこその「録画」なのに、それを禁止するとは時代に逆行していますね。
未だに過去の番組をインターネットで配信するというサービスもありません。地上デジタル放送で視聴者ができるのは、 「買い物」「投票」くらいに限られています。テレビ業界はインターネットへの対応が非常に遅いです。
これにはテレビ番組の複雑な権利関係、広告枠の単価の下落など様々な問題が関係しています。 旧帝早慶を始め、高学歴な学生を新卒採用している割に未だ、解決の道筋は立たず、それどころか視聴者の選択肢を制限しようというのです。 これではますます「視聴者のテレビ離れ」を引き起こし、視聴者の余暇の時間はインターネットに奪われていきます。
もはや人々の趣味は多様化し、休日はテレビを見て、ドライブに出かけるのが当たり前という時代は終わりました。 インターネットの普及により、やりたいことがすぐに調べられて、遊び方も多様化したのです。 すでにおいしいラーメン屋を探すのにテレビ番組は必要ありませんし、休日のデートもテレビ番組を参考にしなくても、デートスポットなどインターネット上にいくらでも情報があるのです。
情報の仕入先がテレビではなく、インターネットに移行したわけですからそれだけテレビの価値は下がり、 視聴者の減少に伴って広告枠の単価も下がり、スポンサーとの力関係に逆転現象が見え始めました。
視聴者からクレームがつくような番組にスポンサーも出資したくありませんから、クレームのつかない無難な番組ばかりになります。 これが「最近のテレビは面白くない」といわれる原因です。テレビ局はスポンサーの都合のいいようにしか番組を作れず、 広告料という「お金が物を言う」状況に陥っています。
今のテレビには昔のような面白さもなく、「みんなの情報源」という役割もインターネットに奪われ、 広告枠の単価の維持のために「録画禁止」という時代に逆行したシステムすら作り上げようというのです。
時代遅れになったテレビの問題点
テレビ業界には問題点が多いです。なぜ時代遅れになってしまったのか、今後テレビ業界を再興するにはどうすればいいのかを考えるには、 まずテレビが抱えている現状の問題点を把握しなければなりません。
まず第一に、テレビの問題点はリアルタイム性がないことです。もちろんいつでもテレビをつけたら何かしら番組は放送されているわけですが、 見たい番組がその時間に放送されているとは限りません。イタリアへ旅行に行きたくなり、情報を集めようと思った時、テレビをつけても旅行番組を放送しているとは限りませんし、 ましてやイタリア旅行を題材にしている可能性はほぼゼロです。
すぐに得たい情報は、テレビを見ても手に入りません。インターネットで検索するか、旅行雑誌を買うかしたほうがよっぽどすぐに手に入ります。 すぐ旅行に行きたいのに、1ヶ月後の「イタリア特集」まで待っていられないのです。 この点では現状、テレビはインターネットに勝つことができません。
第二に、情報が一方通行であることです。テレビは1対多数のメディアですから、視聴者が番組に意見を出したり、質問を出したりすることは原則できません。 NHKなどではニュース番組のとき、画面下部にツイッターの投稿を掲載する場合もありますが、 表示されるコメントの多くはニュース番組の思想に沿ったものです。テレビ局側で「検閲」し、合格したコメントが表示されるわけです。
もちろん視聴者からクレームがつかないように過激な発言や不適切な言葉が入っているコメントを表示することはできません。 とはいえ、情報が一方通行であり、意見や質問を書き込んでも返事がもらえないことには変わりありません。 もしも知恵袋に書き込めば数分で詳しい回答が来るのに、テレビを観ていて疑問が湧いても、質問することすら許されないのです。
第三に、スポンサーの言いなりになっていることです。その昔、広告を打つならテレビか新聞しかなかった時代は、テレビ局は非常に強い存在でした。 というのも、いくらテレビ局に不満があっても、テレビを通じて広告を配信しなければ自社の知名度は上がらず、商品も買ってもらえなかったからです。 しかし、今では広告を打つ場所も多様化し、テレビ局の広告媒体としての価値が相対的に下がりました。
するとスポンサーが番組の内容に注文をつけるようになりました。「視聴者からクレームが来るような番組には出資しない」 「番組内で自社製品を使ってくれないなら出資しない」「自社に都合の良いように番組をつくってくれ」というように、テレビ局に注文をつけます。 テレビ局は広告料収入が減ってきていますので、スポンサーの言いなりです。
つまり、面白い番組をつくろうにもスポンサーがOKを出さない限り、電波にのせることができないのです。 過去の殿様商売のツケともいうべきなのかもしれませんが、「広告枠の単価の下落」→「スポンサーの言いなりになる」→「番組が面白くない」→「視聴者の減少」→「広告枠の単価の下落」という負のサイクルが始まってしまったわけです。
利権で成り立っているだけの斜陽産業
テレビ業界ではもはや、「面白い番組をつくって視聴者を増やし、広告枠を高く売る」というビジネスは成り立たなくなってきています。 「面白い番組」はスポンサーによってNGを出され、視聴者からのクレームを恐れ、スポンサーの都合の良い番組しか作ることができません。 ましてや情報媒体としての役割はインターネットに奪われ、今のテレビ業界が成り立っているのは「利権」のおかげです。
ご存知の通り、テレビ局は電波の独占的使用権が認められています。視聴者が減ったとはいえ、数局で電波を独占しているのですから、 企業が使える広告枠には限りがありますし、まだかなりの影響力を持っています。 そのためいくら「テレビが面白くない」とはいっても企業にとってテレビCMを打つことは効果がありますし、 テレビ局にとってもある程度の収益は見込まれるわけです。
しかし今後、テレビCMの効果はどんどん落ちていきます。視聴者がテレビから離れていき、反対にインターネット広告はどんどん増えていきます。 まだまだ先の話ではありますが、企業がテレビを見限ってインターネット広告に重きを置き始めたら、テレビ業界は終焉を迎えます。
まさしく電波使用権という利権によって成り立っているだけの斜陽産業と言えますね。
インターネット上ではテレビ局の偏向報道に辟易とした視聴者が「これでもか」と言うほど批判を書き込んでいますし、 いつでもどこでも見られるYoutubeの動画を楽しみ、情報はグーグル検索によって入手しています。 ニュースもYahooや新聞会社のWebサイトを見れば足り、休み時間には「2ちゃんねるまとめサイト」を見て過ごすのです。
こうした状況の中、テレビ業界が再興を果たすためには大胆なビジネスモデルの構造改革を実践する必要があります。
テレビ業界が再興するには
斜陽産業のテレビ業界を再興し、成長産業にするにはどうすればよいでしょうか。 ヒントはラジオ業界にあります。
ラジオ業界はテレビの出現により斜陽産業かと思われましたが、車の運転中など、目の離せない作業をしているとき、 テレビよりラジオのほうが都合が良い場合があり、意外にもつぶれていきませんでした。 テレビが番組で「非日常」を演出し、視聴者から遠い存在になっている一方で、 ラジオでは視聴者の投稿に基づき放送を行い、アンケートをとったり、意見を聞いたり、質問に答えるといった内容が多く、視聴者に近い存在としてテレビと差別化を図っています。
ラジオ放送では、視聴者が投稿すると読み上げられる確率が高く、それが番組の人気の秘訣になっている側面もあります。 視聴者が面白い投稿をし、読み上げられることで「面白い番組」がつくられ、視聴者が増えてさらに面白い投稿が増えるわけです。
ラジオは番組自体が面白いのではありません。視聴者によって面白くなるのです。
しかし、テレビは視聴者が多すぎてこういった投稿型の番組はなかなか実現できませんし、 どうしても目と耳の両方に訴えるわけですから動画投稿が中心になり、「ならばYoutubeでいいんじゃない?」となってしまいます。
テレビ番組の強みは、制作費をかけられることです。Youtubeの動画には不可能なほど、芸能人を多数起用して番組をつくることができます。 テレビ番組は「非日常」にもっと力を入れて、「番組」そのものを面白くしてしまえばいいわけです。
「面白い番組はクレームがつきやすいんじゃないの?」という疑問が生じます。 そこで、電波ではなくインターネット配信を使うのです。
バラエティ番組などは非日常の最たるものです。有名芸能人が一同に会し、面白い舞台を演出します。 ところがやり過ぎるとクレームがつき、スポンサーの離反を招きます。 そこで、番組撮影中に出てきたキワドイ部分は電波に乗せず、インターネットを通じて有料配信するのです。
テレビ業界の課金ポイントは、番組中に流れる広告枠でした。その課金ポイントを後ろにずらし、さらに課金対象を 「広告を出稿したい企業」ではなく「番組を見たい視聴者」に変えるのです。 希望者だけが視聴できる有料配信ならば放送コードもクレームも関係ありません。電波で無難な部分を放送して広告料をとり、 もっとキワドイ部分、つまり「カット」されていた部分を「視聴者」に売るのです。
視聴者への課金が進めばスポンサーの影響力も弱まり、クレームを恐れず面白い番組をつくれるようになります。 テレビ放送自体は「教育的」「学術的」「無難なバラエティ」「無難なドラマ」とし、 「過激な番組」をインターネットで有料配信することで課金ポイント、課金対象を増やすのです。
インターネットが普及して、テレビ局に対する不満が噴出しているということは、少なからず視聴者がいて、 テレビ局に対する「希望」ないし「期待」があるはずです。つまり、「もっと面白い番組がつくれるはずだ」と思っているわけです。 事実、テレビ局にはその力があります。今はスポンサーによって制限されていますが、スポンサーの影響の及ばない場所で本来の力を発揮することで、 テレビ業界の再興のチャンスがあると思います。
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著者:村田 泰基(むらた やすき)
合同会社レセンザ代表社員。1989年生まれ。大阪大学法学部卒。2013卒として就活をし、某上場企業(メーカー事務系総合職)に入社。
その後ビジネスの面白さに目覚め、2019年に法人設立。会社経営者としての経験や建設業経理士2級の知識、自身の失敗経験、300冊以上のビジネス書・日経ビジネスを元に、11年間に渡り学生の就職活動を支援している。
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