【売り手市場は嘘】大手志望の新卒が知っておくべき現実
「売り手市場」と言われる就職活動。 しかし、大手志望の学生にとっては、現実がまるで違うと感じることも多いはずです。 本当に誰もが有利な状況なのでしょうか?本記事では、そのギャップの正体と、厳しい現実を突破するための戦略を解説します。
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データで見る現実
現実 | 大手は狭き門 |
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「売り手市場」と聞くと、すべての学生にとって就職が簡単に感じられるかもしれません。 しかし、実際のデータを見ると、特に大手企業を志望する就活生にとっては、依然として狭き門であることが明らかになります。
新卒全体の有効求人倍率はたしかに上昇傾向
まずは、年度ごとの新卒全体の有効求人倍率の推移をご覧ください。
卒業年 | 新卒有効求人倍率 |
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2019年3月 | 1.88倍 |
2020年3月 | 1.83倍 |
2021年3月 | 1.53倍 |
2022年3月 | 1.50倍 |
2023年3月 | 1.58倍 |
2024年3月 | 1.71倍 |
2025年3月 | 1.75倍 |
このように、新卒市場全体では求人倍率が上昇しており、一見「売り手市場」のように見えます。 しかし、企業の規模別に見ると、まったく異なる景色が広がっています。
企業規模別に見ると「売り手市場」は嘘

以下の表は、企業規模別の有効求人倍率の推移です。
卒業年 | 中小企業 | 中堅企業 | 大企業 | 超大企業 |
---|---|---|---|---|
2019年3月 | 9.91倍 | 1.43倍 | 1.04倍 | 0.37倍 |
2020年3月 | 8.62倍 | 1.22倍 | 1.08倍 | 0.42倍 |
2021年3月 | 3.40倍 | 1.14倍 | 0.86倍 | 0.60倍 |
2022年3月 | 5.28倍 | 0.98倍 | 0.89倍 | 0.41倍 |
2023年3月 | 5.31倍 | 1.12倍 | 1.11倍 | 0.37倍 |
2024年3月 | 6.19倍 | 1.14倍 | 1.14倍 | 0.41倍 |
2025年3月 | 6.50倍 | 1.60倍 | 1.14倍 | 0.34倍 |
※参照:[PDF]第41回ワークス大卒求人倍率調査(2025卒)
超大企業志望者に立ちはだかる現実
超大手の倍率 | 0.34倍 |
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- 超大企業(従業員5000人以上)では、有効求人倍率は2025年で0.34倍。
- これは、1つの求人に対して約3人が応募している状態で、明らかに「買い手市場」です。
- 倍率が高い中小企業(6.50倍)とは対照的で、全体平均(1.75倍)とはかけ離れています。
このデータからわかる通り、「売り手市場」とは中小・中堅企業に限った現象であり、大手志望者にとっては依然として狭き門なのです。
就活生の大半は大手志望でしょうから、「有効求人倍率が高いから売り手市場」と言われても「それは嘘だ」と感じるのが正解です。
なぜ大手企業の倍率はここまで低いのか?
超大手 | 就職人気が高い |
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以下のような理由により、大手企業には応募者が集中します。
- 企業名による安心感・ブランド志向:「親に安心して紹介できる」「周囲に自慢できる」といった心理的要因
- 待遇・福利厚生の魅力:初任給の高さ、休暇制度、住宅補助など
- 就職情報サイトでの露出度:知名度が高くエントリーされやすい
- 母集団の巨大化:ES提出者数が万単位になることも
つまり、大手企業は「入りたい人は多いが、採用枠は限られている」ため、倍率が極端に下がってしまうのです。
「売り手市場」は中小・地方・成長産業における話
ニュースやネット記事で頻繁に目にする「売り手市場」という言葉。確かに、全体の有効求人倍率は上昇傾向にあります。 しかし、それはすべての企業における求人がまんべんなく増えているという意味ではありません。
この「売り手市場」を牽引しているのは、実は中小企業や地方企業、そして人材不足が顕著な成長産業なのです。
求人数が多い業界の具体例
- IT業界(エンジニア・SEなどの技術職)
- 介護・福祉業界(ヘルパー・介護福祉士など)
- 建設業界(現場職・施工管理など)
- 地方の老舗企業・ニッチな製造業
- スタートアップやベンチャー企業(DX・AI・環境系分野など)
こうした企業では、採用担当者が「選ぶ立場」にあるというよりも、学生のほうが企業を選べる状況がしばしば見られます。 そのため、学生側にとって非常に有利に就活が進むことも少なくありません。
実際、筆者の私はプログラマーとしても活動しているのですが、毎日のように求人が来ます。 「フルリモート」「社内フリードリンク」「書籍代が会社負担」など様々な特典が提示されており、IT業界の「売り手市場」を感じます。 近年では特に「AI技術者」の求人が増えています。
ですが、大手企業の求人はそういった特典がありません。 なぜなら大手企業の求人倍率は依然として1倍前後、またはそれを下回っており、競争の激しい買い手市場であることに変わりないためです。
大手企業に就職するにはどうすればいいのか
大手企業を目指すということは、倍率の高い選抜試験に挑戦するということです。つまり、巷で言われる「売り手市場」のような楽観的な雰囲気とは無縁であり、 戦略と努力が求められる“狭き門”であることをまず理解しましょう。
ここでは、実際に多くの大手内定者が実践している現実的な突破法を5つ紹介します。
① 早期選考・インターンを狙う
- 夏期インターンから冬期インターンまでをフル活用しよう
- インターン中の活躍により、早期内定ルートに乗れる可能性も
- 本選考前に社内で顔と名前を覚えてもらうことが極めて重要
近年、インターン優遇の早期選考で内定を獲得する学生が増えています。 早期選考は採用枠がフルで空いた段階で選考が受けられるため、大手の内定獲得に最も有利なのです。 これについて、詳しくは次の関連記事で解説しています。
② 志望動機と自己PRを「大手企業向け」にチューニング
- 「サークルで頑張った」などの汎用的な経験よりも、業界理解と企業研究に裏打ちされた志望動機が評価されやすい
- 社風・価値観との“相性”を具体的に語れるように準備する
実は、ESは知っている人だけが有利になる書き方があります。 「就活の軸」で内容を統一し、「軸と社風の一致」をアピールするというやり方なのですが、 この方法を取ると面接の深掘り質問にすべて対応可能になります。
これについて、詳しくは次の関連記事で解説しています。
③ OB・OG訪問を重ねる
- 社風や求められる人物像を直接知ることができる
- 裏ルート情報や具体的な質問対策など、選考突破に直結するヒントが得られる
- 大学のキャリアセンター、ビズリーチキャンパス、LinkedInなども積極的に活用
私の同級生にも、「ある地銀への志望度が高すぎて、焦燥感からOB訪問を申し込んだ」ことが内定につながった人がいます。 「志望度の高さをアピール」「ESの内容を添削してもらえる」などのメリットがありますので、 内定確度を高めるためにも、ぜひOB訪問をしましょう。
④ Webテスト・SPI・適性検査の徹底対策
- 足切りラインが非常に高いため、ここで脱落する学生も多い
- 問題集や模試を活用して、落ちないための基礎力を固める
大手企業ではSPIでの足切りが、実質的に学歴フィルターとして作用してしまっています。 ですが、SPIの内容は高校1年生程度ですから、対策すれば突破も可能です。 私のおすすめは、「志望度の低い企業」を練習台に利用することです。
⑤ エントリー社数でリスクヘッジ
- 「5社だけ出して全滅」は避けたい。20社以上のエントリーを前提に計画を立てる
- 同じ業界内でも企業の規模や難易度に“ランク差”を設けて複数社受けることがポイント
実は、大手企業でも「知名度」によって難易度の差があります。 たとえば食品メーカーや家電メーカーは高倍率ですが、専門商社・機械メーカー・非鉄金属メーカーなどは、 大手でも穴場の企業がたくさんあります。
「低難易度の大手企業」を志望先に加えることで、内定確率を高めていきましょう。 そのような企業群を次の関連記事で紹介していますので、ぜひご覧ください。
まとめ:現実を知れば、戦い方が変わる
「売り手市場だから、大手に入りやすい」――この考えは、大きな誤解です。
実際には、大手企業を目指すということは、“買い手市場の戦場”に挑むということ。 求人数は限られ、倍率は高く、対策を怠ればすぐに弾かれてしまいます。
しかし、だからといって悲観する必要はありません。 大手内定者は、「特別な才能」ではなく、「戦略と努力」で壁を超えた人たちです。
冷静な自己分析と、地に足のついた対策を積み重ねていけば、誰でも大手企業に届く可能性を持っています。
✅ おまけ:大手内定を目指すあなたへ(チェックリスト)
現在の就活の進捗を、以下の項目で確認してみましょう。
- [ ] インターン参加済み(夏・秋・冬)
- [ ] OB・OG訪問した企業数:○社
- [ ] Webテスト対策(SPI/GAB等):○時間
- [ ] ES・志望動機の添削を受けたことがある
- [ ] エントリー企業数:○社(うち大手:○社)
これらを可視化することで、自分の「就活の現在地」が見えてきます。
勝ちにいく就活は、無意識に流されず「行動」と「分析」で進むものです。
焦らず、一歩ずつ進んでいきましょう。