有給休暇は取れない?|義務化でも抜け道あり
「有給休暇は取れない」とよく話題になります。 有給休暇の取得を義務化する案も厚生労働省から出ていますが、当然抜け道もありますから、実際どうなるかを考えてみましょう。
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有給休暇とは?
有給休暇とは、会社を休むのですが、休んでいるのに給料が発生する休暇のことを指します。 有給休暇の意味は、そのまま給料のある休暇です。
普通、会社を欠勤すると、その分給料が減ります。しかし予め会社に「有給休暇を使います」と伝えておくことで、 その日に会社を休んでも給料が減らされないのです。
有給休暇は労働者の権利として、半年以上働いた労働者には必ず付与される権利です。 これは正社員に限らず、派遣社員でも、パートでもアルバイトでも有給休暇を取得できます。
しかしたいていの会社は有給休暇が労働者の権利であることを理解していません。 なぜ働いていないのに給料を払わなければならないのだというのが会社の言い分です。 おかしな話です。給料や休日は理解できるのに、有給休暇だけは理解できないのです。
今の有給休暇制度は、労働者にとって使いにくいものです。というのも、有給休暇は申請しないと使えないからです。 有給制度に理解のない上司がいれば、それだけでもう有給休暇は取得できません。 上司に嫌味を言われたり、「仕事しろ」と言われたり、「生意気だ」と言われたりします。
「大した利益を出していないのに有給休暇を取得するのか」というのが彼らの常套句ですが、 明らかに間違っています。利益の対価はボーナスであり、有給休暇は利益の対価ではありません。 会社に時間と労働力を提供している対価として得られるのが給料と有給休暇なのです。
会社としては、給料を払っているのだから従業員にそれ以上のサービスはいらないと考えています。
そのため、日本の労働者の有給休暇取得率は50%以下となっています。
さらに有給休暇を取得した上で出勤するという暴挙もありますので、実際に有給休暇を取得して休んでいる人は、 50%どころか、もっと少ないでしょう。
有給休暇を取得できるかは上司次第
有給休暇を取得できるかどうかは、上司次第です。 上司が有給休暇に理解があれば、取得しやすいです。嫌味も言わず、ハンコを押してくれます。 有給取得の理由を聞かれることもありません。
しかし、有給休暇に理解のない上司のもとでは、有給取得は夢のまた夢です。 有給休暇を取得させない、断る、ハンコを押さないだけではありません。
一応取得は認めるのですが、有給休暇を取得しようとすると嫌味を言われたり、理由をきかれたりと、 次から有給取得を難しくするように仕向ける上司もいます。「利益を出してから言え」などと的外れな指摘をします。 こういうことがあると有給休暇の取得が難しくなっていきますね。
同じ会社でも有給取得しやすい部署、取得しにくい部署があります。 大企業であればあるほど、課長や部長の権限が大きくなるため、部署によって有給取得率が違うという現象が発生しがちです。
また、会社の規則で「有給休暇を年に○○日以上使わなければならない」とまで定められていても、 「忙しいから仕方ない」と課長や部長が言えば、会社の規則に違反していてもまかり通ってしまう現実があります。 会社説明会で「有給休暇を強制的に使わせる制度があります」と言われても当てになりません。
私の会社にも有給強制取得の制度がありますし、部署によってはしっかり休みを取っていますが、私は休めていません。
取れる部署では取れるどころか、有給を全て消化しなければならない部署すらあります。 友達の中には「12月でまた有給休暇が付与されるからそれまでにあと10日使わないといけない。いつ休もう。」 などと嬉しい悩みを抱えている人もいます。
ですが、総合職で有給休暇をすべて取得できるなんてことはまずありません。 あまり期待せずに入社して、取得できたらラッキーくらいに思っておきましょう。
有給休暇の取得の義務化は意味ない?
有給休暇の取得を義務化しようという動きが、 厚生労働省であるようです。有給休暇の取得を義務化することで、有給取得率を高めようというものです。
義務化の方法は、「有給休暇は申請しないと取得できない」という状態を改善し、 上司から「有給休暇を使え。何日に休む?」と聞かなければならない制度にするというのです。 確かに有給の申請ができないという問題は解決できそうです。
しかしながら、有給が義務化されたからといって、必ずしも休めるとは限りません。
有給休暇の取得が義務化されて、 なぜ必ずしも休めるとは限らないのでしょうか。その理由は有給休暇に出勤するという手段が残されているからです。
見かけ上、有給休暇取得率を高めるために、有給休暇を申請させておきながら、 実際には出勤させるという暴挙がまかりとおっています。 今でさえ「いつの間にか有給休暇を使ったことになっていた」ということがあるのですから、 義務化されたところで「いつの間にか使ったことになっていた」有給が増えるだけの話です。
社会のブラック企業事情には、厚生労働省の官僚こそ最も詳しいはずです。 厚生労働省そのものがブラックなのですから・・・
しかし有給休暇の取得率が低い理由について認識が甘いです。 ということは、パフォーマンスだけであって、 労働者を休ませてあげようという気持ちは特にないということがわかります。
・・・とまでは言えません。
有給休暇をとって、本当に休んでいるかどうかなんて確認のしようがないからです。 厚労省の職員が常に会社を監視しているわけではありませんし、 「会社にいなかった」証拠なんていくらでも会社は作れます。
そういった法令無視のブラック企業はどんな制度を適用しても、 必ず抜け道を探します。いったんブラック企業のことは置いておきましょう。
今回の有給取得の義務化により、恩恵を受ける人は少なからずいるはずです。 気を遣って申請ができないという問題を解消するのですから、かなりの改善策です。
有給休暇の取得率の高い業界
有給休暇の取得率が高い業界はどこでしょうか。 特に有給取得率の高い業界はやはり、メーカーです。
なぜメーカーは有給取得率が高いのでしょうか。それは、社員の構造によるものです。 メーカーはブルーカラーである工場労働者と、ホワイトカラーがいます。 ブルーカラーが、社内の待遇改善を推し進めてくれるのです。
労働組合で積極的に待遇改善を求めてくれるのは、ブルーカラーです。 ホワイトカラーは幹部候補生ですので、あまり会社に逆らうことができません。
しかしブルーカラーは、ブルーカラーがいないと会社が成り立たない上に、 幹部候補生でもありませんので出世を期待していません。 出世に期待するよりも、待遇改善を求めたほうが効率がいいのです。
銀行や商社など、総合職と一般職しかいないような会社では、労働組合はあまり役に立ちません。 労働組合として会社と戦うと、将来の自分の出世にひびくのではないかと心配されるからです。
銀行や商社では残業を何時間しようが、休日出勤しようが、有給休暇の取得率がゼロであろうが、 文句をいう労働組合がありませんので待遇改善もありません。
しかし工場を持ち、ブルーカラーを多く抱えているメーカーでは、 決められた残業時間を超えると会社に労働組合が詰め寄りますし、 休日出勤が多いとやはり労働組合が詰め寄ります。
有給休暇を取らせないなど、労働組合にとって許せることではありません。 労働者の権利ですから、組合としてはこの権利を守る必要があり、 それが組合の仕事でもあります。
よって、トヨタやホンダの有給休暇取得率が高いのも、強力な労働組合のおかげでしょう。 労働組合が強い会社は、概して待遇も良いものです。JR東日本、JR東海、JR西日本なども同様なのではないでしょうか。
特に化学メーカーがそのほとんどで取得率が50%を超え、残業時間も少ない会社が多いです。 ぜひチェックしておきましょう。
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著者:村田 泰基(むらた やすき)
合同会社レセンザ代表社員。1989年生まれ。大阪大学法学部卒。2013卒として就活をし、某上場企業(メーカー事務系総合職)に入社。
その後ビジネスの面白さに目覚め、2019年に法人設立。会社経営者としての経験や建設業経理士2級の知識、自身の失敗経験、300冊以上のビジネス書・日経ビジネスを元に、11年間に渡り学生の就職活動を支援している。
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