「平均年収」は当てにならない|メーカーや総合職は特に!
就活では「平均年収」を気にしてしまいますが、当てにならない指標なので信用してはいけません。 計算方法が会社によってバラバラで、総合職・現業職の人数でも変わりますし、 「低く・高く見せよう」と操作するのも簡単だからです。
目次
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平均年収は当てにならない
本当の平均を表していないから!
平均年収は、その会社の社員の年収を平均したものです。平均年収はどうやって調べるのかと言うと、 会社四季報や就職四季報は不要です。会社の有価証券報告書を見れば、 平均年収が載っています。上場している会社なら公開しているものです。
ところがその平均年収、まったく参考にならないのです。 例えば日本製鉄の平均年収を調べてみると・・・
「567万円」「576万円」「634万円」
んなわけあるか!!歴代経団連会長を務め、つい最近まで世界一の高炉メーカーだった、 日本最強の企業の平均年収が本当にこれだったら日本は終わってます。
本当は日本製鉄の年収は高いです。日本製鉄の総合職なら30代で年収は1000万円を超えます。
しかし有価証券報告書上では、日本製鉄の平均年収は600万円前後と、安く表示されています。 これにはカラクリがあります。
メーカーの「平均年収」が低いカラクリ
誰の平均かが決まっていない!
メーカー企業は特に「平均年収」が低く算出され、銀行や商社に比べて見劣りしがちです。 ですが、メーカーの総合職の年収が低いというわけではありません。
メーカーは特に現業職を多く抱え、さらに拠点ごとに一般職もたくさんいます。 比率としては「総合職:現業職:一般職=5:4:1」といったところでしょうか。
総合職の年収が1000万円を超えていても、現業職と一般職が「平均年収」を押し下げる効果があります。
現業職や一般職が多ければ多いほど平均年収は安く算出されます。 工場の規模の大きいメーカーほど、「表面上」低く見えてしまうというわけです。
会社によって総合職の比率は異なりますから、一概に平均年収はいくらだと計算することはできません。 社員の総合職の比率を公開している会社もありません。 つまり、総合職として就職する限り「平均年収」は当てにならない指標だと言えます。
計算方法はバラバラな上に非公開
計算方法が決まっていない!
「平均年収」は有価証券報告書の前半にある「従業員の状況」という項目に載っています。 「平均年間給与」の欄に書かれている数値がそうです。
しかし、その計算方法はどの会社も公表していません。
「役職者を含む・含まない」「賞与や残業代を含む・含まない」「パート・アルバイトを含む・含まない」など、 会社によって算出方法がバラバラな上に、注意書きに書いてあったり、なかったりします。
有価証券報告書に「平均年収」を書く義務自体はありますが、実はその方法は特に決まっていないのです。
この理由は主に2つあります。
クレーマー対策のため
1つがクレーマー対策です。
日本製鉄の平均年収には、役職者の給与が平均年収に含まれていません。 つまりは平社員の平均年収。役職者を除いて算出されていることは、有価証券報告書にしっかり書いてあります。
どこからを役職者というのかは書かれていませんが・・・とある社員の方にきいたところ、 30代半ばで役職がつくそうです。10年も働けばこの平均年収とは無関係になります。
なぜ平均年収を低く見せようとするのかは、考えてみれば当然です。 有価証券報告書は誰でも閲覧できるのですから、顧客がみて「給与が高すぎる!もっと鉄を安くできるだろう!」 などと言われては困ります。まぁ実際は顧客も日本製鉄の給与が高いことは知っているでしょうが、マナーの問題です。
顧客はもちろんのこと、平均年収が高くて怒るのは株主です。 従業員に高い給料を払うくらいなら、株主配当をくれというのが株主の正直な気持ちです。 株主の気持ちを刺激しないように、平均年収を低く見せかけて批判をかわしているのです。
それに平均年収には現業職、一般職の給与も含まれています。 この数字を見ても大卒総合職の年収はわかりません。
逆に言えば、平均年収を低くみせている会社は従業員の給与を守るということです。
ホールディングス制をとっている会社では、持株会社であるホールディングスの従業員は数10人だったり、 100人程度しか在籍していません。そのような会社が公表している平均年収は、もちろんホールディングスの平均年収です。
ホールディングスの傘下にある会社で従業員がいくら給料をもらっていても、 表にはホールディングスにいる数十人の平均年収しか公開しなくていいのです。
傘下の会社の社員の給料を守っているともとれますし、 非公開にして実は安い給料しか払っていない可能性も考えられます。
「高い給料」合戦を避けるため
もう1つの理由が、企業間の高給合戦を避けるためです。
計算方法や「総合職」「現業職」など細かくわけて公開してしまうと、 誰でもその会社の年収を計算できてしまいます。
そうなると、労働組合が賃金改善の材料として使ってきたり、 就活や転職で会社が不利になったりしますよね。
他社に負けない給料を設定しようと給料の値上げ合戦が始まり、 会社はコストが膨らんでしまいます。それを避けるために、ぼかすという手段を取るわけです。
以上のような理由で、本当の意味での平均年収はわからない仕組みになっているのです。
高い平均年収は残業代と役職手当のおかげ!
管理職手当や残業代が入っていたり、いなかったり!
例えばキーエンス。言わずと知れた高給企業。 なんと平均年収は2110万円! しかし有価証券報告書には「役職者を除く」とは書いてありません。
また、「基準外賃金」を含むと書かれています。基準外賃金とは、家賃補助だったり、 昼食手当だったりと、基本給とは別の給料です。残業代や休日出勤手当も基準外賃金です。 残業代や休日出勤手当、役職手当を含んで2110万円です。
部長や次長、課長から平社員まですべて含めての平均年収ですから、 おそらく就活生が知りたい情報としてはこちらのほうが正確でしょう。 しかしこれが真の意味での平均年収なのかどうかは知る術がありません。
なぜなら、この2110万円の構成員のどれだけが総合職なのかわからないからです。 全ての従業員が総合職なら、平均年収が2110万円というのも特におかしな話ではありません。
この中に一般職や現業職が多く含まれていたならば、少ない総合職で平均年収を2110万円まで引き上げていることになりますので、 さらに高給企業ということになるでしょう。
一般的に、工場や現場など現業職、技能職また一般職を多く抱える企業は、 その分平均年収が低くなります。しかし総合職が現業職、技能職、一般職と同じ給与であるとは限りません。 給与体系が違う、昇給が違う、手当が違う等します。
しかし総合職のほうが数が少ない場合は平均年収は高くなりません。 以上より平均年収はホワイト企業かどうかを判断するのに当てになりません。
就職四季報の「総合職平均年収」だけは信頼性が高い
総合職平均だけが信頼できる!
就職四季報の「総合職平均」だけは信頼性が高い「平均年収」です。 こちらは四季報がアンケートを取る際に一定のルールで計算させて、総合職の年収だけを平均しているからです。
これには基本給・各種手当・残業代・ボーナスが含まれており、現業職や一般職は計算に含まれません。 総合職として就職を希望する人にとっては極めて参考になる指標です。
ですが、四季報のアンケートに答えなかった会社は、印がついていません。 就職四季報でも「総合職平均」の印がない企業は多く、 大半はしょうがなく「有価証券報告書」のものが記載されています。
有価証券報告書の平均年収は前述の通り、会社によって計算方法が全く異なります。 総合職の比率でも変わりますし、管理職を含んでいたりいなかったり、残業代を含んでいたりいなかったり、 ボーナスを含んでいたりいなかったりと、まったく信頼性がありません。
就職四季報の「総合職平均」以外には惑わされないように注意しましょう。
「平均年収」で就職先を選んではいけない!
会社間で比較できない指標!
平均年収で就職する会社を選んではいけません。
この理由は2つあります。
まず1つが、「平均年収」は「平社員のみなのか、管理職も含むのか」「一般職や現業職がどれくらい含まれるか」 「社員の年齢構成がどうなっているのか」などで違いが現れ、会社によって前提が異なる指標で比較できないからという理由です。
2つ目が、「平均年収が高い=幸せ」ではないからです。 同じ仕事をして「500万円」と「1000万円」なら、後者の方がいいに決まっています。 ですが、500万円稼ぐ仕事と、1000万円稼ぐ仕事では脳や体の酷使具合がまるで違います。
「平均年収」を額面で評価しがちですが、そこに「仕事のキツさ」を含めると、 お金だけでは幸福度は測れないという現実が見えてきます。
というのも、「給料の高さ」は「仕事のキツさ」と比例するからです。 「どうせどこへ行っても仕事がキツいのは変わらないし」という人もいますが、それは誤りです。
社員が生み出した「付加価値」以上に給料を支払う会社は存在しません。 それだと会社は赤字で倒産してしまうからです。 「もらえる給料以上に付加価値を生み出している」という前提があります。
会社で生み出された「付加価値」の労働分配率はおよそ30~40%です。 年収500万円なら、1000万円分の働きはしているということになります。 生み出した付加価値の半分以上が会社と株主のものになっているわけです。
特に平均年収が2000万円にものぼるキーエンスや1300万円のファナックは、 「給料の高い会社」として有名です。ところが実は、両社の労働分配率はおよそ20%です。 その裏では社員1人あたり6000~1億円分の働きをしていることは無視できません。
2000万円分の働きで1000万円もらえる商社と、1億円分の働きで2000万円もらえるキーエンス。 どちらが本当に「給料が高い会社」でしょうか。
投資家にとっても就活生にとっても「平均年収」は当てにならない指標どころか、 「ホワイト企業かどうか」を見図るための指標にすらならないのです。
少なくとも「こっちの会社のほうが平均年収が50万円高いから」といった会社選びはまったく意味がないので、 やめておきましょう。
このようにMY就活ネットでは「間違った会社選び」を防止するための記事を他にも用意しています。 ぜひご覧になって、後悔しない就活を実現してください。
国税庁の平均年収
国税庁の平均年収も当てになりません。 なぜなら「分母となる集団の属性」があまりに大雑把で、かつ標本調査に過ぎず全国民を調査したわけではないからです。
- 標本事業所(標本として抽出された源泉徴収義務者)(21,176所)及び標本事業所に勤務する給与所得者(330,113人)から得た標本値にそれぞれの標本抽出率及び調査票の回収率の逆数を乗じて全体を推計
- 複数の事業所から給与の支払を受けている個人が、それぞれの事業所で調査対象となる場合、複数の給与所得者として集計される
例えば「副業」などで複数の会社に勤めてそれぞれ100万円ずつ給料をもらった場合、 その人の年収は200万円ですが、国税庁の統計上は「100万円をもらった人が2人」という計算になるということです。
加えて公表される平均年収は、「性別・年齢・正規・非正規」で区分されているに過ぎず、 「学歴」や「総合職・現業職・一般職」の区分はされていません。 「大卒総合職」とそれ以外では給料に大きな差がありますが、統計ではまとめられてしまっているわけです。
「平成30年分民間給与実態統計調査」では、正規雇用の男性は559万円、女性は386万円となっています。 男女計では440万円ですから、サラリーマンの平均年収が400万円というのは概ね正しいです。
しかしこれはあくまで会社が支払った給与総額を足して割っただけであり、 年収が400万円な人がたくさんいるというわけではありません。 400万円あれば普通の生活ができるかというと、そうとも限りません。
「サラリーマン」と言われるとスーツを着て仕事をする人のイメージがつきまといますが、 会社から給料をもらう人、例えば受付係やお茶くみ係、清掃員やタクシードライバーに至るまでみんな「サラリーマン」です。 その「平均」などあまりに大雑把で参考にするべきものではありません。
加えて大卒総合職に限って言えば、入社2年目には年収が400万円を超えます。
平均はあくまで平均であり、この数値がいくら上がった・下がったといっても、 その分母がどう変わったのかがわかりませんから一喜一憂するのはまったく意味がありません。 平均年収に踊らされることのないよう、注意しましょう。
さて、「平均」と言えば「平均残業時間」も調べる方が多いと思います。 平均残業時間は平均年収よりさらに当てにならないことを次の関連記事で解説していますので、ぜひ参照してください。
→会社とは?|部署・役職・出世事情などの仕組みを知ろうの記事へ戻る
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→「ジョブトラ」に参加する
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著者:村田 泰基(むらた やすき)
合同会社レセンザ代表社員。1989年生まれ。大阪大学法学部卒。2013卒として就活をし、某上場企業(メーカー事務系総合職)に入社。
その後ビジネスの面白さに目覚め、2019年に法人設立。会社経営者としての経験や建設業経理士2級の知識、自身の失敗経験、300冊以上のビジネス書・日経ビジネスを元に、11年間に渡り学生の就職活動を支援している。
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